2008年02月01日
研究開発情報

各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 庄田 隆
(コード番号 4568 東証・大証・名証各第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 高橋 利夫
(TEL:03-6225-1126)

高コレステロール血症治療薬「メバロチン(R)」の大規模臨床試験 「MEGAStudy」の女性解析結果発表について

-閉経後女性に対するメバロチンの投与が心血管系疾患の発症リスクを減少-




 これまで女性に対する高コレステロール血症治療が心血管系疾患(心筋梗塞、狭心症、脳梗塞など)の初発リスクを、どの程度減少できるか明らかに されていませんでしたが、日本で実施された大規模臨床試験MEGA Study から、心血管系疾患の既往のない閉経後女性の高コレステロール血症患者において、男性と同様、メバロチン(R)(一般名:プラバスタチン ナトリウム)による治療が有用であることが示され、2008年1月29日に米国の医学誌「Circulation」において発表されましたのでお知らせし ます。

 MEGA (MANAGEMENT OF ELEVATED CHOLESTEROL IN THE PRIMARY PREVENTION GROUPOF ADULT JAPANESE) Study は、厚生労働省(当時の厚生省)の委託研究事業として1994 年に始められた、コレステロール低下による心血管系疾患の一次予防を目的とする日本初の大規模な無作為化比較試験で、約8,000名の高脂血症*1患者 (総コレステロール値220~270mg/dL)を対象に、食事療法単独または食事療法+メバロチン(R)(一般名:プラバスタチン ナトリウム)治療群との2群に無作為割付けをし、心血管系疾患の一次予防効果を、平均5年以上観察し比較検討したものです。
 今回、発表された結果は、このMEGA Study の登録者数の多くを占める5,356名の閉経後女性のデータについて解析されたものです。この解析によって、対照群(食事療法単独群)にくらべ、食事療 法+メバロチン(R)(一般名:プラバスタチン ナトリウム)治療群において、以下の成績が得られています。
▲女性についても、男性と同様の心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患(CHD)ならびに心血管系疾患(CHDと脳血管障害を足したもの)の発症リスクの減少効果が期待できることが示された。
▲とくに年齢が高くなるほど、メバロチン(R)(一般名:プラバスタチン ナトリウム)による治療効果が高くなることが示された。

 今回の試験成績について、MEGA Study試験の試験統括者の中村治雄先生(防衛医科大学校名誉教授・三越厚生事業団常務理事)は、「スタチン系薬剤のコレステロール低下治療による男性 の心血管系疾患の一次、二次予防効果、ならびに女性の二次予防効果については、これまでに実施された数多くの大規模臨床試験により証明されてきた。近年は 女性の心血管系疾患の発症率が増加傾向にあり、また日常診療で見る高コレステロール血症患者の女性の割合も高くなりつつある中で、今回、閉経後の女性にお いてもメバロチンによる治療によって心血管系疾患の一次予防効果があることが示されたことの意義は大きい。
 今後の高齢化社会において、健康に長生きするためにも、55 歳を過ぎた閉経後女性においては健康診断などで脂質異常が見られたならば、ぜひ医師に相談し、脂質改善治療を受けていただきたい。」と述べています。

*1 高脂血症:2007 年の動脈硬化性疾患予防ガイドラインから脂質異常症と名称が変更されている。

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<ご参考>
MEGA Studyの試験デザイン
■デザイン: PROBE 法(*1) に基づく多施設共同無作為化比較対照試験
冠動脈疾患(CHD)の既往のない、総コレステロール値220~270mg/dL の高脂血症
患者を、食事療法単独群と食事療法+メバロチン(一般名:プラバスタチン ナトリウム 10~20mg/日)治療群との2群に無作為割付けをし、心血管系疾患の一次予防効果を、平均5 年以上観察し、比較検討した。
■試験期間: 1994年2月~2004年3月(平均試験期間5年以上)
■対象: 冠動脈疾患の既往のない高脂血症患者7,832例
(総コレステロール値220~270mg/dL、平均243mg/dL)
■評価項目: 1次評価項目/CHD(*2)
2次評価項目/脳卒中、CHD+脳梗塞、すべての心血管系疾患、総死亡 等

<補足>
脂質検査はSRL(*3)にて集中測定され、データはスポンサーより独立したCRO(*4)にて一元管理された。

(*1) PROBE 法:Prospective, Randomized, Open-labeled Blinded Endpoints
前向き,無作為化,オープン(非盲検)試験.どちらの治療法かを医師も患者も知っているが、
それを知らない第三者がエンドポイント(評価項目)の評価を行うことでバイアスを回避する臨床試験の方法.
(*2) CHD: Coronary Heart Disease.冠動脈疾患(致死性または非致死性心筋梗塞、狭心症、心臓死・突然死、冠動脈血行再建術)
(*3) SRL:Special Reference Laboratory.米国疾病管理予防センター(CDC)の承認を受けた検査センター
(*4) CRO:Contract Research Organization.開発業務受託機関.

MEGA Studyの結果概要
試験期間中、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)はいずれも対照群より低く、HDLコレステロール(HDL-C)は高く維持され、良好にコントロールされた。
(血清脂質値の変化:TC 値243mg/dL→214mg/dL、LDL-C値157mg/dL→128mg/dL、HDL-C値58mg/dL→60mg/dL、TG値127mg/dL→119mg/dL)
CHDの発症率は、対照群にくらべ33%抑制され(P=0.010)。
このうち、心筋梗塞の発症率は、48%抑制され、ほぼ半減した(P=0.03)。
CHDに脳梗塞を加えた心血管系疾患の発症率は、対照群にくらべ30%抑制された(P=0.005)。
 一方、統計学的な有意差はないものの、脳卒中の発症率は17%(P=0.33)、総死亡は28%(P=0.055)の抑制傾向が示された。がん発生率を 含めた有害事象は、両群間に有意差は認められず、メバロチン(一般名:プラバスタチン ナトリウム)の長期服用の安全性が確認された。

以上

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