水リスク

第一三共グループが事業を推進・継続するにあたり、十分な量の良質な淡水がすべての事業所およびバリューチェーンにおいて利用可能であることは、非常に重要であると考えています。水に関するリスクとしては、物理的リスク、規制リスク、評判リスク等が考えられ、世界的に関心が高まっています。第一三共グループでは、工場・研究所を対象とし、事業に影響をおよぼすと考えられるリスクについて状況を把握しています。
具体的には、WWF-DEG Water Risk Filterを用いて、立地する地域固有の水リスクを分析した結果と、各工場・研究所からの水リスクに関する調査結果を基に、総合的にリスク評価を実施しています。その結果、上海工場、アルファビレ工場が当社グループの中で最も水リスクが高い地域に立地する事業所であると評価し、取水制限等の規制強化を主なリスク要因として特定しています (表1)。現状ではこれらの工場を有するグループ会社の売上に占める比率は5%未満となっていますが、これらの工場では、規制動向に注意すると共に、水使用量の更なる適正化に努めています。具体的には、アルファビレ工場では雨水の生活用水への利用などの施策を実施しています。国内ではアンケート調査により、水質悪化、水不足、排水の水質/排水量の規制、水の効率的使用など、物理的・規制および評判リスクが要因となる事業への影響について把握に努め、その結果に基づき分析、評価を進めています (表2)。国内工場では工業用水の使用量低減などの施策に加え、昨今の気候災害の激甚化への対策として、2022年度は、品川研究開発センターおよび葛西研究開発センターにおいて水害リスク評価と水災対策マニュアルの整備、設備浸水の軽減策を計画しました。さらに、第一三共ケミカルファーマ小名浜工場、第一三共バイオテック北本工場では浸水リスクは極めて低いことを確認したことで、国内の研究所および工場における水害リスク対策を完了しています。水害による自社拠点の一時操業停止という物理的リスクに対して、当社では「2025年度までに水災マニュアルの整備率:日本国内の研究所・生産事業場100%」という目標を設定しました。その対応として、2023年度に事業場ごとのリスクアセスメントと水災マニュアルの作成を完了しました。 なお、水使用量、排水量については第三者保証を受けています。

水リスクの高い地域にある事業所の水使用状況(表1)

工場立地 流域河川 取水量
(1,000m³)
排水量
(1,000m³)
水消費量
(1,000m³)
上海工場(中国) Yangtze River
(揚子江)
41.4 33.8 7.6
アルファビレ工場
(ブラジル)
Parana
(パラナ川)
10.1 5.5 4.6
合計 51.5 39.3 12.3

水リスク要因と主な影響(表2)

リスク要因 主な影響
水不足 水の供給が停止・制限された場合の研究・生産活動の低下
水質悪化 製造用水への影響(水浄化費用の増加等)
洪水・高潮・豪雨:河川氾濫による設備等の浸水 浸水による操業停止・生産、出荷不能による工場停止や売上減
水の効率化、リサイクル等に関する義務化 再生水利用の義務化による設備設置等のコスト増加
排水の水質/排水量の規制強化 下水道代上昇によるコスト増加、排水の水質規制強化による設備設置等のコスト増加
干ばつ 原材料となる農作物被害
水供給の季節変動/経年変動 変動による安定操業への影響

水資源の適正利用

水資源は医薬品の生産に欠くことのできない重要な資源であり、持続的な利用を推進すべき生態系サービスの一つであると考えています。事業所が位置する国あるいは地域の水資源の状況、水使用にかかわるリスクや課題を把握するとともに、適正かつ効率的な利用、浄化装置による再利用の推進、使用量の削減などの対策を行っています。2023年度の水使用量は511㎥/億円 (2020年度比 40.7%減少) となりました。また、グループ全体の水使用量は、8,191千㎥と2020年度比で2.4%減少しました。

水使用量(取水量)・排水量(グループ全体)

各年度のデータは当時の会社構成をもとに集計しています。

廃棄物削減の目標と実績

第一三共グループでは、「最終処分率(最終処分量/廃棄物等総発生量)を1%未満とすること」をゼロエミッションと定義しています。工場・研究所においては、廃棄物の発生抑制、資源の効率的な利用を重要課題として設定し、製造・包装工程での省資源化、不要物・廃棄物の分別徹底・減容化・再資源化などに取り組み、外部に処理を委託する場合も、可能な限り再資源化を行っている業者を選定しています。オフィスにおいてもゴミの分別徹底、OA用紙の両面使用、ペーパーレス化などを推進しています。
国内では、2022年4月1日「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が施行されました。EUでも「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関する指令」による規制が始まるなど、国内外においてプラスチック廃棄物抑制、資源循環の重要性が高まっています。当社グループでは、プラスチック廃棄物については、説明会で使用する文献袋や社員携帯カードなど包装資材や配布物などの素材変更に取り組んでいます。

廃棄物排出量・再資源化量・最終処分量(グループ全体)

各年度のデータは当時の会社構成をもとに集計しています

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廃棄物コンプライアンスの推進

第5期中期経営方針に基づき、廃棄物の不適正処理の未然防止策の一環として、工場・研究所・オフィス等の事業所を対象とする環境監査では、廃棄物処理法の遵守状況を重点的に確認しています。また、各事業所では、法律で求められている廃棄物処理業者の現地確認(法令の遵守状況、契約の履行状況、許認可状況、実際の処理状況など)を、定期的に実施しています。
また、2016年度より廃棄物処理に伴うリスク低減を目的に国内グループの全事業所で電子マニフェストを導入しています。

廃棄物削減への取り組み

事業所内でのOA用紙の使用量削減

両面印刷やNアップ印刷、資料配布の抑制(パソコン・プロジェクターの活用によるペーパーレス)、プリント削減啓発ポスターの掲示、ICカード認証によるミスプリント防止などの取り組みを行い、効率的なOA用紙の使用を維持しています。

3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進

事業所内リユースの推進

本社地区、品川研究開発センター、葛西研究開発センターでは、「文具類回収トレー」を設置し、文具類のリユースを推進しています。また、両研究開発センターでは文具類のみならず、リユース可能な器具・備品を回収して「リユース展示室」に陳列し、再利用を促進するとともに、展示品の入れ替えの案内などを積極的に行うことに加え、両研究所間での相互利用も行っています。

回収有機溶媒のリユース

第一三共ケミカルファーマ小田原工場では、回収した有機溶媒を外部で精製した後、製造工程で再使用しています。

リサイクルの推進

第一三共プロファーマ平塚工場では、製剤工程で使用した製剤作業衣やラテックス手袋をマテリアルリサイクルしています。

製剤作業衣

ラテックス手袋

PTPシートのリサイクルプログラムの実証実験

2024年9月末時点で薬局・ドラッグストア・公共施設・病院へ計102か所に回収ボックスを設置しており、プログラム開始以来、累計約5トンの使用済みのおくすりシート(PTPシート)を回収しています。回収されたおくすりシートは、新たなリサイクル製品として生まれ変わります。回収ボックスは、第一三共の本社ビル1FのDaiichi Sankyoくすりミュージアムにも設置しています。

Daiichi Sankyoくすりミュージアムに設置している「おくすりシートくるりんBOX

クローズドリサイクルの取り組み

当社の特例子会社である第一三共ハピネスの平塚事業所では、障がい者雇用を通じた循環型社会への貢献として、クローズドリサイクル*1を行っています。回収した書類等を再利用可能な紙のみに分別したうえで、協力業者においてトイレットペーパーに再生し、回収先の事業場で利用しています。別の事業場への水平展開や全社員を対象とした環境eラーニングで好事例として紹介するなど、社会課題解決への貢献に取り組んでいます。

*1 使用済みの自社製品から回収した素材を、自社製品に再使用・再利用すること

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