当社グループでは、第5期中期EHS経営方針において「省エネルギー・省資源、温室効果ガス・廃棄物の削減に取り組み、サプライチェーン全体の環境負荷の低減を実現する」を掲げ、資源・エネルギーの効率的利用に努めています。気候変動に対する責任ある企業活動として、パリ協定の目標(世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑えること)と整合した「Science Based Targets(SBTi)*1」の考え方に基づき、2025年度のCO2排出量目標として2015年度比▲42%、2030年までのCO2排出量目標として2015年度比▲63%を設定しました。 第一三共ケミカルファーマ 小名浜工場では新管理棟が2023年3月に竣工し、第一三共グループ初となる建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)*2の「Nearly ZEB*3認証」を取得しました。太陽光発電設備については小名浜工場、第一三共ヨーロッパのパッフェンホーフェン工場に続き、第一三共製薬(上海)有限公司の上海工場においても稼働を開始しています。2022年4月より国内の本社ビル、生産事業所、研究所、研修所など13拠点の電力について、実質的な再生可能エネルギー(トラッキング付FIT非化石証書)への転換を行いました。さらに欧州やブラジルの事業所でも、再生可能エネルギーの活用を拡大することでCO2排出量削減を実現しています。国内外事業所における一層の再生可能エネルギーの活用に向けた取り組みを継続しています。
2023年度のCO2排出量は109,239t(2015年度比▲50.2%)となりました。CO2排出量削減等の「緩和」のみならず、気候変動により顕在化した影響や中長期的に避けられない影響に対する「適応」についても取り組みを推進しています。

*1パリ協定の目標である世界の平均気温上昇(2℃を十分に下回る水準(Well Below 2℃)に抑え、また1.5℃に抑えることを目指す)の達成に向け、科学的根拠と整合したCO2削減目標を企業に求める国際的イニシアチブ

*2Building-Housing Energy-efficiency Labeling System

*3消費するエネルギーと創出するエネルギーの収支をゼロにするZEB(Net Zero Energy Buildingの略称)に限りなく近い建築物として、エネルギーの収支を75%以上削減した建築物

TCFD開示

気候変動リスク

第一三共グループは、地球温暖化や異常気象などの環境問題について、私たちの生活や仕事に影響する重要な課題と認識しています。気候変動をはじめ様々な環境問題に対し責任ある企業活動を行うために、第一三共グループ企業行動憲章および第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しています。 また、2019年5月にTCFD*1提言への賛同を表明し、2020年にはガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。さらに2021年10月に改訂されたTCFD提言に対応した情報開示を進めると共に、グローバルな課題である気候変動に積極的に応えていくため、気候変動に関するガバナンスや事業戦略の更なる強化を目指します。

*1TCFD (Task Force on Climate-related Financial Disclosures):主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会 (FSB) によって2015年12月に設立されたタスクフォース。

TCFDの提言に基づく情報開示

<ガバナンス>

企業活動全般において、環境 (Environment) の保全と健康と安全 (Health & Safety) の確保に努めマネジメントを一体的に運営・推進するため、EHS経営最高責任者を委員長とし、関係本部長 (取締役含む) 、グループ会社社長を委員として構成する「EHS経営委員会」を設置しています。年2回グローバルEHS経営に関する方針や目標設定、活動の審議・報告を実施しており、審議・報告事項については、取締役会に報告され監督される体制となっています。2023年度は、Scope3削減に向けたビジネスパートナーエンゲージメントの推進及びネットゼロ移行計画策定などについて審議しました

コーポレートガバナンス

環境経営推進体制の運用

<リスク管理>

気候変動や水に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクを把握し、その対策を講じるよう努めており、当社グループのリスクマネジメントシステムの一環としてリスク対応策を実施しています。EHS経営委員会では、気候変動による影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、その財務的なインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を果たしており、重大リスクの懸念がある場合は取締役会に報告され、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルへの移行を目指し、中期および短期での目標・実施計画を審議・決定しています。

リスク
1.5℃シナリオ
  IEA SDS (WEO2021)
  IEA NZE 2050
炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生
4℃シナリオ
  IPCC RCP8.5
サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下
機会
1.5℃シナリオ SBT達成に向けた各種施策によるコスト削減や負担回避・投資家からの評価向上
4℃シナリオ 気候変動に伴い増加する疾患への貢献

TCFDの分析に使用したスコープ別CO2排出量比率

<戦略>

地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は、気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化も推進し、カーボンニュートラルの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。
一方で、CO2排出量は事業から直接排出される排出量 (Scope1、Scope2) は少なく、サプライチェーンから排出される排出量(Scope3)が多いことが特徴です。このような認識に基づき、気候変動に伴う当社ビジネスへの影響を把握し、レジリエンスを明確にするため、シナリオ分析を実施しました。

シナリオ分析の実施

2021年度には部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA (国際エネルギー機関)・ IPCC (気候変動に関する政府間パネル) が公表するネットゼロシナリオなどに関する勉強会を実施し、2030年以降の事業リスクおよび機会について検討を行いました。IEA・ IPCCのシナリオを用い、「移行」および「物理」双方について、バリューチェーン全体のリスク・機会を洗い出し、洗い出されたリスク・機会については、2022年度にEHS経営委員会で審議・評価を行い、承認を受けています。具体的には「調達」「直接操業」「製品・サービス需要」の観点からリスク・機会を洗い出し、6つに分類しました。IEA・IPCCの脱炭素化シナリオ (1.5℃) と、脱炭素化が達成されないシナリオ (4℃) について選択したのは、物理的リスク・移行リスクの両方において、その極端なケースを想定し、予め備えることが重要であると判断したためです。それぞれについて、「発生頻度」「事業影響」「投資家の関心有無」の観点から事業への潜在的影響およびレジリエンス (強靭性) を整理し、財務影響に投資家の視点も加えて2030年と2050年までを対象に総合的なリスク・機会の評価を実施しました。

シナリオ分析の結果と第一三共のレジリエンス
1. 5℃シナリオ (移行が進んだ世界)
環境の変化 リスク・機会 第一三共への潜在的影響 影響度 第一三共のレジリエンス 事業リスク
脱炭素関連の政策・法規制強化 炭素税導入 2030年時点の炭素税が130$/t-CO2に上昇すると想定しても、年間のコスト負担は約15億円~30億円。*2 財務的インパクトは限定的であり、1.5℃目標に引き上げた気候変動対策を推進することで更に軽微なものにしていく。
再エネ導入に伴う炭素税負担回避 将来的な炭素税導入・上昇の対策として、再エネ調達による排出量削減が重要。 再生可能エネルギーを積極的に活用することにより、2030年時点の年間の炭素税負担回避額は約16億円~32億円。*2国内外事業所の電力は、2030年度までに100%再生可能エネルギー由来に転換する。 機会
再エネ設備導入コスト増 エネルギー源は電気・ガスが中心。地域によっては既に再エネ電力を調達。既存の電力をすべて再エネにした場合、年間のコスト負担は約3~6億円。 再エネ・省エネ設備の追加費用は低下傾向であり、対策の推進によりコスト削減に繋げる。 低 / 機会
エネルギーコスト等増加 エネルギー事業会社の脱炭素対策が実施され、対策自体の導入・運用コストが増加すると将来的なエネルギー調達コスト増が予想される。 化石燃料由来のエネルギーコストの上昇が予想されるが、現時点では影響は限定的。
調達コストへの価格転嫁 ビジネスパートナーが自らの炭素税負担を価格転嫁することで調達コストが上昇する可能性があり、供給網全体での排出量削減が重要。 ビジネスパートナーとの協働により、スコープ3の削減を進め、炭素税負担の回避に繋げることで調達コストの上昇を抑える。 低 / 機会
企業評価に対する脱炭素への取組の影響増大 企業価値の増加 脱炭素への取組がESG投資家から評価され、株価上昇など企業価値向上に繋がる。 脱炭素社会に向けた取り組み、TCFD提言への積極的な対応、株主・投資家の期待に応える情報開示を行うことで評価向上に繋げる。 機会
4℃シナリオ (物理的影響が大きくなる世界)
環境の変化 リスク・機会 第一三共への潜在的影響 影響度 第一三共のレジリエンス 事業リスク
気象災害
(大雨・洪水・台風) の発生頻度増、規模拡大
サプライチェーン寸断 安定供給に支障をきたすリスクの高まり。生産・出荷不能により、工場停止や売上減などのリスク。 在庫管理を強化し、災害時でも安定供給に努める複数社からの購買を実施、複数社から購買できていない原料については今後検討していく
自社拠点の一時操業停止 重要な研究・製造拠点が浸水する可能性 (水災リスクは総計約94億円)。
製造拠点の一部は河川に近くとも浸水の可能性は低いが、交通寸断などにより一時操業停止の可能性。
BCPの観点から拠点の水災リスク評価を実施し、強靭化を進めている。緊急事態訓練における洪水対応・減災対策を強化し、水災マニュアルの整備・実証を担保してレジリエンスを高める。
異常気象 (浸水) による不良在庫化 物流拠点などの浸水に伴い、操業停止に加えて製品在庫も被害を受ける可能性。
気温上昇 気候変動に伴う疾患増加等 悪性黒色腫、循環器、呼吸器疾患、各種熱帯病などに対する関連医薬品の需要拡大と社会からの要請・期待の高まり。疾病構造の変化に伴う既存製品の需要減少の可能性。 需要拡大に応える生産ラインの確保、在庫管理強化に努める。疾病構造の変化やパンデミックも含め、アンメットメディカルニーズ・社会要請の高い疾患に対する研究開発を外部リソースとの連携も合わせ検討する。 中 / 機会
空調設備コスト増 本社、研究開発、製造拠点ともに屋内作業が基本であり、気温上昇に伴い空調コスト増が予想されるが影響は限定的。 軽微 コスト増は吸収可能な範囲であり、財務影響は軽微であるが、引き続きエネルギー効率改善に努める。
保険料 / BCPコストの増加 気温上昇に伴う風水害の激甚化により、現在でも火災保険料が上昇傾向にある。ただし、将来的な保険料の上昇見通しは限定的。 軽微 日本では4℃上昇時、洪水発生頻度が4倍上昇すると予想されているが、その結果、保険料が数倍に上昇したとしても財務影響は軽微である。
水不足 自社拠点の一時操業停止 最も取水リスクの高い工場である中国とブラジルでの操業停止の可能性。その他地域で想定を超える短期的な渇水の可能性。 雨水タンク設置・リサイクル水活用などの渇水対策を推進する。*3長期に渡り渇水となった場合、薬事規制の動向をみつつ、他拠点活用・製造委託などの緊急時供給対応を検討する。
生物多様性の喪失 天然化合物由来製品の生産低下 生物多様性の喪失により原料が入手できず生産が止まってしまった場合、約20億円/年の損失が予想される。 数年分の原料在庫は確保されており、リスクが顕在化する前に迅速な対応を実施する。

*影響度は、軽微 (1億円未満)、小 (1億円~50億円)、中 (50億円~100億円)、大 (100億円~300億円)を基準に評価

*事業リスクは影響度と発生頻度を考慮し総合的に評価

*22030年時点後の炭素排出量に炭素価格を乗じて算出

*3ブラジルのアルファビレ工場の貯水タンク設置(約450万円の費用投入)。

事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化による安定供給についての懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働により、炭素税などの負担回避によるコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性を高める予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保等の対策を実施することで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。 シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、EHS経営委員会および取締役会でグループ全体の進捗管理を行っていきます。

<指標と目標>

バリューチェーンごとに事業への潜在的影響および気候関連のリスク・機会を評価・管理する指標と目標として、第5期中期経営計画におけるKPIおよび環境に関する目標を定めています。第5期中期経営計画の進捗を踏まえ、2021年度に気候変動に関わるKPIの見直しを行った結果、Scope1およびScope2については1.5℃の世界に対応した目標水準へ引き上げを行うとともに、Scope3についてもサプライヤーエンゲージメント目標として、サプライヤーに要請するCO2排出量削減目標の設定を「1.5℃水準」へと更新し、2023年6月に、SBTイニシアチブより「1.5℃目標」の認証を取得しました。

CO2排出量 (Scope1+Scope2) 2025年目標:2015年度比42%減
2030年目標:2015年度比63%減
CO2排出量 (Scope3、Cat1) 2025年目標:2020年度比売上高原単位15%減
ビジネスパートナー・エンゲージメント (Scope3、Cat1) 2025年目標:ビジネスパートナーの70%以上が1.5℃水準の目標を設定
再生可能電力利用率 2025年目標:60%以上
2030年目標:100%
CO2排出量
単位:t-CO2
2020年 2021年 2022年 2023年
Scope1 86,785 88,249 86,006 85,245
Scope2 96,080 103,150 23,729 23,994
算定方法

Scope1:日本の二酸化炭素およびエネルギーの換算係数は、地球温暖化対策の推進に関する法律の数値を使用。日本以外の国々については、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコルに基づく。

Scope2:電力購入の契約に基づく排出係数を用いて算定(マーケット基準)

また、当社取締役は気候変動を含むESG指標の目標達成度等に応じた中計業績連動株式報酬を採用しています。
当社役員報酬制度の概要

当社役員報酬制度の概要

内部カーボンプライシングについては、仮想炭素価格の形式で費用対効果を検証する仕組み (国内グループ会社において、特に大きな省エネ効果が期待できる施設を対象として、ランニングコスト、消費電力量、CO2排出量、炭素税などを考慮) から、国内のカーボンクレジット市場導入を見据えた新しい仕組みへの変更を検討していきます。

CDP 2023気候変動 において「A リスト」に選定

2024年2月、国際環境非営利団体CDP*4より、気候変動に関するコーポレートサスティナビリティにおいて、透明性とパフォーマンスにおけるリーダーシップが認められ、最高評価である「Aリスト」企業に4年連続で認定されました。

当社グループは、カーボンニュートラルへの社会要請の⾼まりを受け、2022年6⽉にCO2排出量を2025年度に2015年度⽐42%減、2030年度に63%減とパリ協定の1.5℃目標に整合したより野⼼的な⽬標に変更しました。そのために、2025年度⽬標である再⽣可能電⼒利⽤率60%以上を達成させ、さらに、RE100*5で掲げた再⽣可能エネルギー由来の電⼒利⽤率100%を2030年度での早期達成を⽬指します。なお、この目標は2023年6月にSBTi*6から認証を受けており、さらに2023年8月には2050年度までに温室効果ガス (GHG) 排出量を実質ゼロにするネットゼロ達成に向けて、SBTiへコミットメントレターを提出しました。引き続き、水素利用、ZEB (ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、電気自動車や次世代蓄電池など実装可能な脱炭素技術を積極的に活用し、脱炭素社会の実現に貢献することで、2030年ビジョンである「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を目指します。

*4環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買組織の要請に基づき、企業や自治体に、気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関して情報開示を求め、また、それを通じてその対策を促すことを主たる活動としている非営利組織

*5国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ

*6CDP、国連グローバル・コンパクト、世界資源研究所 (WRI) 、世界自然保護基金 (WWF) による国際的イニシアチブ。気候科学に沿った排出削減とネットゼロ目標のベストプラクティスを定義し、推進している。

「RE100」に加盟

2021年7月、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100」に加盟しました。当社は、「世界中の⼈々の健康で豊かな⽣活に貢献する」というパーパスと「⾰新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供する」というミッションに基づき、事業活動を通じて社会やステークホルダーの皆さまへ持続的に価値を提供し、同時に当社グループの成⻑と発展を図っています。第5期中期経営計画では、事業基盤に関わるマテリアリティの⼀つとして「環境経営の推進」を特定し、「脱炭素社会」、「サーキュラーエコノミー」、「⾃然共⽣社会」の実現に向け、バリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取り組みにチャレンジしていきます。

CO2排出量の削減目標と実績

2023年度のCO2排出量(Scope1+Scope2)は109,239t-CO2(2015年度比▲49.8%)となりました。CO2削減等の「緩和」のみならず、気候変動により顕在化した影響や中長期的に避けられない影響に対する「適応」についても取り組みを推進しています。Scope別では、Scope1およびScope2のグループ全体の2023年度実績はそれぞれ0.9%減少および1.1%増加となりました。Scope2については米国における生産量の増加が主な要因です。
Scope3 CO2排出量が4,408,736t-CO2で、2022年度から増加となりました。購入した製品・サービス(Cat.1)の増加が大きな要因です。Scope3(Cat.1)の削減に向けては、70%以上のサプライヤーが1.5℃目標を持つことを第5期中期経営計画におけるKPIとして設定しており、現在エンゲージメントを強化しています。

CO2排出量の要因別増減量(グループ全体)

 

CO2排出量の内訳(グループ全体)

 

スコープ別CO2排出量

地域別CO2総排出量(スコープ1およびスコープ2)

(t-CO2


SCOPE1 SCOPE2 合計
日本地域 63,848 2,173 66,021
日本以外 21,398 21,821 43,219
合計 85,245 23,944 109,239

サプライチェーン排出量(スコープ3)(グループ全体)

カテゴリ 2022年度
排出量
(t-CO2
2023年度
排出量
(t-CO2*
対前年
増減率
算出方法
購入した
製品・サービス
1,892,504 3,887,790 105.43% 全ての製品・サービスの調達金額に、ガイドライン等による排出係数を乗じて算出した。ただし、スコープ1、2およびスコープ3の他カテゴリーに含まれる内容やグループ内取引は除く。
資本財 161,326 220,563 36.72% 固定資産の取得金額に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
Scope1,2に含まれない
燃料およびエネルギー
関連活動
24,051 28,217 17.32% 電力使用量、蒸気使用量に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
輸送、配送(上流) 47,270 49,275 4.24% 当社が委託した運送や配送、保管に関する費用に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
事業から出る廃棄物 10,517 10,800 2.70% 工場・研究所から排出される廃棄物の種類別の重量値に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
出張 34,473 44,043 27.76% 出張に伴う移動手段別の交通費および宿泊費に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。ただし、スコープ1に含まれる営業車両の使用分は除く。
雇用者の通勤 10,624 4,926 △53.64% 雇用者の通勤に伴う移動手段別の交通費に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
リース資産(上流)貸借 自社が賃借しているリース資産の操業に伴う排出量はスコープ1,2に含まれているため、カテゴリ8は算定対象外とする。
輸送、配送(下流) 14,163 145,857 929.85% 当社のグループ連結の売上高に、ガイドライン等による排出係数を乗じて算出した。
販売した製品の加工 当社が製造・販売している製品のうち、川下の企業向けに原薬を販売しているものの、該当する排出量が全体に占める割合は極めて小さいことが想定されるため、カテゴリ10は算定対象外とする。
販売した製品の使用 医薬品の特性上、製品使用にもとづくエネルギー使用はないため、カテゴリ11は算定対象外とする。
販売した製品の廃棄 2,747 4,072 48.22% 販売した製品の容器・包装の材料別重量に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
リース資産(下流) 2,820 2,248 △20.29% 自社から他社に賃貸している保有資産の用途別の建物床面積に、ガイドライン等による排出原単位を乗じて算出した。
フランチャイズ フランチャイズ店を運営していないため、カテゴリ14は算定対象外とする。
投資 5,485 10,945 99.54% 株式を保有する各社のCO2排出量(スコープ1+2)に、当社の持ち株比率を乗じて算出した。
合計 2,205,979 4,408,736 99.85%

*2023年度は排出量単位割当の見直し等の算定方法の変更および活動量の増加により、CO2排出量が増加しました。

CO2排出量削減への取り組み

工場・研究所の取り組み

国内、海外グループともに、設備更新時は省エネルギー性能にすぐれた高効率冷凍機・ボイラーを選択、導入するとともに、蒸気配管の断熱工事、空調運転の効率化、光ダクトを使用した太陽光利用など、CO2排出量削減に取り組んでいます。

オフィスの取り組み

オフィスビルでは、全館LED照明や人感センサーを採用し、省エネルギー化を推進しています。その他、通年ビジネスカジュアル、未使用会議室の消灯・空調オフの徹底、スケジュール管理の適正化による定刻退社の推奨など、オフィスでのエネルギー削減も積極的に展開しています。また、社員の事業所間移動については、Webシステムのさらなる充実と活用により、国内外の出張を削減するよう努めています。

エネルギー使用量

エネルギー使用量の内訳(グループ全体)

再生可能エネルギーの活用

第一三共ヨーロッパ パッフェンホーフェン工場(ドイツ)では、2014年より購入電力をすべて再生可能エネルギーによる電力に転換していますが、2022年2月より同工場の敷地内に自家消費型 太陽光発電設備(年間発電量580MWh)を稼働し、さらに、2023年度から蒸気製造についてバイオマスの木質ペレットを使用した再生可能燃料への転換を開始しました。さらに、第一三共製薬(上海)有限公司の上海工場においては同工場の事務棟で消費される年間電力相当を賄うことのできる太陽光発電設備(年間発電量約540MWh)が2023年1月より稼働を開始し、年間300トンのCO2削減効果を見込んでいます。また、2020年12月から年間発電量約4,000MWの太陽光発電設備の稼働を開始した第一三共ケミカルファーマ 小名浜工場では、第一三共グループ初となる「Nearly ZEB認証」を取得した新管理棟が2023年3月に竣工しました。この管理棟は、太陽光発電によりエネルギーを創り、高効率な空調・給湯・照明機器を効果的に組み合わせて省エネを実現することで、基準建築物のエネルギー消費量の78%削減(省エネ:51.9%、創エネ:26.9%)を達成しました。第一三共グループはRE100※4に加盟しており2030年度に再生可能エネルギー由来の電力利用率100%、マテリアリティKPIとして2025年度に60%以上を掲げています。2023年度の再生可能利用率は80.0%とRE100達成に向け順調に推移しており、今後も太陽光発電をはじめとする各種再生可能エネルギーを積極的に導入していきます。

※4国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ

 

第一三共ケミカルファーマ 小名浜工場

第一三共製薬 (上海) 有限公司 上海工場

第一三共ヨーロッパ パッフェンホーフェン工場

再生可能エネルギー量と内訳

種類 エネルギー量
(MWh)
備考
太陽光発電 131,576 日本、ドイツ、中国のサイトで発電した電力および日本で購入した電力です。
水力発電 62,927 日本、ドイツおよびブラジルのグループ会社で購入しています。
バイオマス熱 6,887 ドイツのグループ会社で購入しています。
その他
再生可能エネルギー
10,920 日本、ドイツ、フランス、スペイン、中国などのグループ会社で購入しています。

排出権取引等

品川研究開発センターと葛西研究開発センターは東京都環境確保条例に、第一三共バイオテックは埼玉県地球温暖化対策推進条例に基づく総量削減義務と排出量取引制度の対象事業所となっています。地球温暖化対策の推進の程度が特に優れている事業所として、品川研究開発センターは2019年度に、葛西研究開発センターは2020年度に準トップレベル事業所に認定されています。

その他補足事項

換算係数とその出典

二酸化炭素換算係数およびエネルギー換算係数については、地球温暖化対策の推進に関する法律(以下、温対法)での換算係数(算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧)を使用しています。また、日本以外の国々の係数に関しては、排出源地域の当局等の基準あるいはGHGプロトコールに基づいています。

算定除外対象について

排出量データの内、スコープ1、スコープ2ともに、日本を除くスモールオフィスの排出量は算定対象に含んでいません。また、CO2以外の温室効果ガス等についても排出量が少ないことから含んでいません。

販売製品の温室効果ガス排出量について

販売製品のうち、その利用により温室効果ガスの排出量を削減するものはありません。

環境パフォーマンスデータの信頼性向上

ステークホルダーへの情報開示の信頼性の向上を目的として、環境パフォーマンスデータの第三者保証を受けています。環境パフォーマンスデータの集計は、購買伝票など第三者が発行する証憑に基づき、客観性の高いデータ入力を基本とし、開示データの精度向上、信頼性向上に努めています。

to Page Top