アフリカにおいて、5歳未満児死亡率や妊産婦死亡率が高く、MDGsの達成状況が悪い国、地域を検討した結果、タンザニアを、現地NGOの協力を得て活動を展開していく国として特定しました。
1歳児のはしか接種率と妊産婦の健診受診率を成果指標とし、特に、医師不足や病院へのアクセスが悪いなどの医療インフラが未整備の地域において、NGO、現地政府、地域社会と協力し、移動診療サービスを行ってきました。
2011年度から5年間にわたり本活動を展開し、乳幼児のワクチン接種率および産前健診率の向上などに貢献しました。
活動終了後は、巡回医療活動が現地の行政に移管され、自立した活動が実施されています。

5年間の活動のまとめ

MDGsへの対応課題 目標4 乳幼児死亡率の削減
目標5 妊産婦の健康の改善
目標6 HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
活動概要 移動診療サービス
・基礎的医療、ワクチンの提供、妊産婦健診
・医療に関する情報提供、意識啓発
活動期間 2011~2015年(5年間)
パートナー 国際NGOプラン・インターナショナル
成果指標
・はしかの予防接種を受けた1歳児の割合
・妊産婦健診を受ける妊婦の割合
成果目標(5年間) ・予防接種者数 約11万人
(1歳未満児 2万人、5歳未満児 9万人)
・妊産婦健診数 約14.4万人
活動実績 巡回医療活動 対象:1地域、2台、1,145回
乳幼児予防接種 対象:1地域 約1万1千回
妊産婦健診 対象:1地域、約1,700人
成果 1歳未満児はしかワクチン接種率(目標値90%)75%から91%に増加
妊産婦健診受診率(目標値50%)34%から71%に増加
160名のコミュニティ保健員にトレーニングを実施
現地からの声 急に産気づいた時に対応できるよう、医療機関に行くために必要な交通費を積み立てる『共同貯蓄』が開始。
保健デーやコミュニティ保健員によるコミュニティーでの知識普及活動などを通じ、結核とはしかのワクチンについて理解する人の割合が2倍以上に増えた。

5年間(2011年度~2015年度)の活動報告は、以下の通りです。

活動報告

2011年度報告(活動1年目)

2011年度からプロジェクトを開始し、保健員トレーニング、ベースライン調査(例:各種予防接種の接種状況、産前・産後検診の状況、医療施設までの距離)などを実施したほか、予防接種促進のためのバナーやポスターを作成しました。
11月にキサラウェ活動地域のキクウェテ村で、第1回保健デー※1を開催し、その様子を視察しました。

ベースライン調査の際は、保健センターに来る人にも精力的に聞き取り調査を実施

トレーニング受講中に熱心にメモを取る保健員

幼児の体重を計測するコミュニティ保健員

コミュニティ保健員との情報交換

子どもを予防接種や健康診断に連れてきた母親たち

保健デーでは、地域住民が乳幼児への予防接種の意識啓発の劇も披露

※1 保健デー:医療従事者とコミュニティ保健員が協力し、学校や野外で実施します。主に母親を対象に、乳幼児の食事や栄養に関する知識普及活動、保健相談、乳幼児定期健診、予防接種などを行います。 本プロジェクトでは、対象の74ヶ村の各村で3ヶ月に1回開催します。

【VOICE】

母子保健プログラムへ貴重なご支援をしてくださっている第一三共グループに、プラン・タンザニアの職員とキサラウェ・コミュニティを代表して御礼を申し上げます。他の多くの途上国と同じように、タンザニアでは大勢の子どもが、予防できるはずの病気によって命を落としています。母親や乳幼児向けの医療サービスは、この問題を解決する糸口となるでしょう。こうした医療サービスへのアクセスを妨げている要因として、主に親の知識不足と保健施設までの距離が遠いことが挙げられます。第一三共グループの巡回医療活動により、村レベルで医療サービスや親を対象とした教育が受けられるようになるので有り難いです。

今までは10kmほど離れた保健センターへ片道2、3時間かけて予防接種に行かなければならず、一人で双子を連れて行くのは大変でした。自宅の近くで予防接種や定期検診を受けることができるようになり、とても嬉しいです。

2013年度報告(活動3年目)

2011年度の活動開始から3年目を迎えた2013年11月、進捗状況のモニタリングと、本活動において重要な役割を担っている地域のコミュニティ保健員の表彰式を行うため、タンザニアを訪問しました。

タンザニアでは、首都ダルエスサラームより南西約45Kmにある、キサラウェにて活動を行っています。移動診療車は1ヶ月に17の村を訪れます。

首都から比較的近い距離にあるキサラウェですが、首都とつながる幹線道路をすこし離れると舗装されていないでこぼこ道になります。自宅から最も近い医療施設まで5~15Km以上離れていることも珍しくなく、移動手段がない住民にとっては医療アクセスが困難な状況がうかがえました。

今回は、村の保健デーが実施されたパラカ村を訪問しました。

子どもたちが歓迎してくれました

荷台部分が診察室になる移動診療車

保健デーの開催

本活動では、移動診療サービスに加え、対象の76の村で3ヶ月に1回、保健デーを開催しています。保健デーは、医療従事者とコミュニティ保健員が協力し、学校や野外の広場で実施されており、主に母親を対象に、乳幼児の食事や栄養に関する知識普及活動、保健相談、乳幼児定期健診、予防接種などを行っています。

乳幼児の発育測定(体重)を定期的に行い、その都度医師から適切な指導を行います

妊婦の健診の重要性を、字の読めない住民でも理解しやすいように劇で伝えます

子どもの成長記録を母子手帳と台帳に記帳するコミュニティ保健員

乳児にワクチンを投与

コミュニティ保健員の表彰式

コミュニティ保健員の表彰式を行い、「母子の命を守る」ことを意識しながら他のコミュニティ保健員へ好影響を与える活動を行った4名に表彰状を送りました。彼らの献身的な活動が本活動を支えています。

賞状の授与

献身的な活動に感謝します

今回表彰された4名のコミュニティ保健員

移動診療車の前で記念撮影

【VOICE】

2000年からこのキサラウェ地域で、子どもと母親の命を救うためにコミュニティ保健員として活動しています。出血している出産間際の母親をみつけ、病院に連絡をし、すぐに彼女を病院に運んだことがあります。彼女は帝王切開で出産をし、今では母子共に健康な日々を送っています。このような活動ができることを嬉しく思うとともに、キサラウェ地域の保健員を代表して皆さまからの支援に感謝します。

今回の訪問で印象的だったこと。

今回の訪問では、「他に好影響を与える活動をしている」、「母子の命を救うことに貢献した」という基準で優れた活動を行っているコミュニティ保健員を選出し、その働きを讃える表彰式を行いましたが、今回表彰の対象にならなかったコミュニティ保健員についても、10年以上にわたり村でのボランティア活動を続けている方が多数います。彼らの献身的な活動によって、本活動は着実に成果をあげているということを改めて認識する機会となりました。 また、身近に医療サービスを利用できるようになった住民の嬉しそうな顔、手ごたえを感じ医療従事者のモチベーションが高まっている様子、トレーニングを受けたコミュニティ保健員が活動の一員として誇りを感じながら、活き活きと活動している姿を見ることができ、コミュニティのエンパワーメントという観点からは非常に重要で、着実な成果といえるかと思います。引き続き、活動の質・成果のさらなる向上を目指し取り組んでまいります。

遠い日本の地からアフリカの国々の人々の健康を見つめて支援していきます。(第一三共 サステナビリティ推進部)

移動診療サービスというと無医村に医師、看護師と薬を乗せて診療車で定期的に廻るという印象が強いと思います。この診療車は非常に価値のある大きな存在なのですが、実は、移動診療車が村々を廻ってこない間の住民の健康管理も非常に重要な活動になっています。すなわち、村々に住んでいる母子の健康を常に見守り、健康の大切さを啓発し、必要に応じて医師に患者さんの状態を伝える活動が求められています。
この役割を担う方々が村の住民で、かつ、保健の知識を備えたコミュニティ保健員になります。今回は、我々の活動の中で村の健康を支えている縁の下の力持ちに相当するコミュニティ保健員の方々の日頃の苦労を称えることを大きな目的のひとつとして、現地に出向き表彰式を実施してまいりました。これらの保健員の方々は、我々の活動の中でトレーニングを受け、行政で資格を認定されていますが、普段は農業や漁業を生業としており、保健員の仕事はボランティア活動となっています。今回の訪問によって、保健員の方々、村の住民の方々、地域行政の方々は、第一三共が遠い日本の地からもアフリカの国々の人々の健康を見つめて支援していることを肌で感じていただけたものと信じています。今後も医療アクセスの改善のために、車や設備などのハード面とともに、現地における関係者の活動の質の向上を図るソフト面の充実も検討していきたいと考えています。

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