大学の薬学部で博士課程を修了してすぐ、化学メーカーに入社しました。抗がん剤領域で低分子化合物の創薬研究を10年間行ったのち、2021年8月、第一三共に入社。
第一三共は、自社内で研究から開発までしっかり成果を上げており、創薬力や研究力のレベルが高い製薬会社だと、前職時代から感じていました。ADCをはじめとした自社創製品をしっかり持っていて、それに続く自社の研究開発パイプラインが多数あるというのは、第一三共の強みであり魅力だと思います。
他部門と密に連携しながら、薬効薬理試験のレベルを高めていく
現在は、がん免疫領域における次世代ADCの研究開発チームで研究テーマリーダーを務めています。担当は薬効薬理で、チームメンバーは4人。自部門の薬理試験を進めるとともに、合成、薬物動態、安全性などの他部門と連携してテーマを推進しています。また、リーダーとして成果を上長に報告したり、他部門からの質問に回答したりするのが主な役割です。
仕事を進めるうえで、他の部門との密な連携が欠かせません。日々仕事をする中で感じているのは、とにかくメディシナルケミスト(創薬化学者)の能力が高いということ。どんどんアイデアを出して新しい化合物の形をデザインし、より良い化合物を作る能力に長けているんです。彼らとは毎日のようにコミュニケーションを取って、些細なことでも直接相談するようにしています。
メディシナルケミストに限らず、それぞれ役割を持つ他部門の人たちと連携しながら仕事を進められるのも、第一三共ならではの魅力です。そうすることで知識の幅も広がりますし、視野が広く持てるようになる。ADCや抗体医薬、生物学的製剤など、どんどんモダリティが複雑化していく中で、さまざまな知見を吸収しながら研究ができるのはとても恵まれていると感じますね。
入社後すぐに、自分の経験を活かして力を発揮できた
私自身は入社してすぐ、創薬薬理研究をしてきたバックグラウンドを活かして、評価系の改善に取り組みました。評価系とは、薬の薬理活性を評価するシステムのこと。細胞や酵素、動物など、それぞれのマテリアルの実験条件を工夫して、薬理活性を正しく評価できるようにチューニングする作業を行いました。優秀なメディシナルケミストの力を最大限発揮するためにも、薬理活性をより高めるためにも、薬理作用を正しく表現しなければなりません。
新しい評価系を作ったことで、医薬品を改善するうえでの方向性がはっきりしてきた実感も得られていますし、これまで第一三共が培ってきた知識や技術の基盤に自分の経験をうまく組み合わせて、オリジナリティを発揮できていると感じています。アサインされたテーマと私の経験の相性がよかったこともあり、入社して半年経たないうちから新しい評価系を構築してテーマに貢献できました。
ステージアップにも挑戦。サイエンスに基づいて話せば、社歴に関係なくチャンスがある
第一三共に入社したことを特に実感したのは、今担当しているテーマのステージアップにチャレンジしたタイミング。研究が進むにつれて、承認申請に向かってどんどんステージを上げていくのですが、そのステージアップの提案を2022年6月に経験しました。
各部門長にテーマの状況を報告し、次のステージに進んでもよいか、何か足りないものはないかなど細かく確認しながら意見をもらいました。1〜2ヶ月ほどかけて念入りに準備したのち、研究所全体の会議でステージアップの提案をし、結果は無事承認。入社してから約10ヶ月、1年足らずでこのような大きなチャンスを得たことは、自分の中でも大きな経験として印象に残っています。
入社して驚いたのは、職位が高い研究者も、自身で手を動かして実験に取り組んでいること。以前の職場では職位が上がるにつれて研究現場から離れる人も多かったのですが、第一三共では忙しい中でも幹部社員が現場感を持って働いていて、良い意味でのギャップを感じました。
アドバイスや意見を求めた時も、自身の経験に基づいてコメントをもらえますし、場合によってはチームの実験にフォローメンバーとして参画します。信頼できると同時に、一切のごまかしがきかない緊張感もあります。自社でしっかり研究して、製品を作って、職位が上がっていって……というサイクルが回っていることを感じています。