第一三共のR&Dグローバリゼーションリードとして、グローバル研究開発における大規模変革の陣頭に立つ井ノ口明裕さん。当初から製薬企業のリーダーになることを夢見ていたわけではなかったそうですが、長年のキャリアを通じて得てきたことを活かし、グローバル研究開発を率いるリーダーの一人として活躍しています。これまでの歩みで感じてきたこと、リーダーとして大切にしていることについて語ります。
免疫システムへの関心から医薬品開発の道に.
学生時代に人体の不思議に魅了されたことが、患者さんを救う医薬品開発のキャリアに繋がっているという井ノ口さん。「免疫システムがどのように機能し、他の部位とどのように相互作用するのか学びたい」という探求心を持ち、東京工業大学の生命科学科から大学院へ進学しました。そして卒業後は、第一三共の前身である三共の臨床開発担当となります。このとき、医薬品開発は、研究者が発明した科学の「有望な種」を、患者さんのための革新的な医薬品に変換する、やりがいのある専門分野だと感じました。
やがて、臨床開発やグローバルプロジェクトマネジメントをはじめ、医薬品開発の専門領域でより大きな責任を担うように。その中で、世界中の様々なチームのメンバーから多くのことを学んできました。研究開発戦略に携わった後には経営学でも修士号を取得し、ビジネスパーソンとしての洞察力にも磨きをかけました。
社員が一丸となれば、一人でやるよりも多くを成し遂げられる
現在、執行役員と研究開発本部開発統括部長を務める井ノ口さん。自身の30年以上にわたる経験を活かし、第一三共の研究開発組織を、地域ごとに焦点を合わせたチームから、統合したグローバルなサイエンス拠点へと変革する取り組みを指揮しています。
第一三共がオンコロジー分野でグローバル研究開発リーダーになるための変革において、井ノ口さんが核になると考えているのは、社内で働く人々です。そのため、自らがリーダーシップを執る上では、オープンな姿勢で積極的に人の話を聞く、というアプローチを取り、それぞれの社員の強みを認識し、全員がベストを尽くせる環境を意識しています。そうすることで、個々の社員が一人で行うことの集合体よりも多くのことを、チームとして成し遂げることができるのです。
「私は、誰しもが持っている、社員一人ひとりの長所を引き出したいと考えています。それを引き出して任務を果たすために活用するのは、リーダーの務めです。また、チームワークも極めて重要です。例えば、ある業務を個人で遂行できるとしても、その結果は限定的になりがちです。チームで動き、各々の視点、考え、経験を持ち寄れば、より良い結果を出すことができるはずです。」
~第一三共 執行役員 研究開発本部・開発統括部長 R&Dグローバリゼーションリード 井ノ口明裕さん~
井ノ口さんのリーダーとしての強みは、第一三共で働き始めた頃にプロジェクトマネジメントに携わった経験と、社内の様々な部門のリーダーとの関わりによって培われてきました。
現在はグループ内のグローバルリーダーとの連携に加え、チームメンバーのコーチングや育成、ポートフォリオに関わるリソースの管理に多くの時間を費やしています。今後は次世代のリーダー育成にさらに注力することが、第一三共の研究開発組織がグローバルなサイエンス拠点へと変貌し、待ち受ける困難に立ち向かうための礎となる、と考えています。
井ノ口さんはハイキングも情熱をささげています
革新的な医薬品をがん患者さんに届けるために
臨床開発段階にあるADC(抗体薬物複合体)に加え、井ノ口さんが注目を注いでいるのは、免疫ががん細胞を攻撃する力を活用した、がん免疫分野の医薬品です。
「私たちは現在、特にオンコロジー分野において、優れたサイエンスと有望でダイナミックなポートフォリオを有しています。そして、独自の技術プラットフォームを活用し、現状の標的と異なる分子を標的とし、作用機序も異なるがん免疫薬を創ろうと取り組んでいます。これは魅力的な研究分野であり、有意義な貢献となることが期待されます。」