バイオロジクスユニット長 籔田 雅之

先進バイオ技術で、患者さんに貢献し続けるーバイオロジクスユニット長 籔田さんのストーリー

2022年03月15日
Our Science
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第一三共入社後、バイオ医薬品の培養工程や製造プラントの設計に携わり、バイオで社会に貢献したいという信念を持ち続けた、バイオロジクスユニット長の籔田さんが、バイオ技術での患者さん貢献への想いを語ります

がん治療の可能性開拓を目指し、バイオ技術を強化

近年、製薬業界全体において「低分子からバイオへ」という潮流が強まっています。バイオ医薬品は、化学合成で製造していた低分子医薬品と異なり、遺伝子組換え技術を用いて細胞で生産します。このバイオ医薬品は、がん等の難治性疾患への治療効果が期待されています。
第一三共は現在、さまざまなバイオ医薬品の中でも、ADC(抗体薬物複合体*)というバイオ医薬品に注力しています。10年後には第一三共グループの事業の大部分を、ADCを初めとするバイオ医薬品が占めていることでしょう。こうした未来予測のもと、私たちバイオロジクスユニットは抗体技術に一層磨きをかけ、世界有数の抗体技術を持った会社へと発展することを目指しています。

患者さんにあまねく届けるために、安定的な量産を目指す

バイオロジクスユニットは、研究段階では小さな試験管の中でつくられていたものを、いかに安定的に量産するか、というテーマと向き合い続けてきました。この経験と知見を新たな領域でも発揮し、有効性と安全性だけではなく、薬剤価格の低減という点でも患者さんに貢献していくことが私たちのミッションだと考えています。
特に、このミッションのカギとなるのが、製造の効率化です。細胞をつくる・培養する・精製するという各工程について、我々は独自の技術を持っています。これらの独自技術をバイオ医薬品製造に活用することで、開発スピードや生産効率が大幅に上がるよう、研究を続けています。この技術が広く使われるようになれば、患者さんにとっても社会にとっても大きなプラスとなるでしょう。

未来の治療技術に向けた見極め

科学は日々進歩しています。既存の技術の向上だけでなく、最先端のトレンドを捉え、将来を見据えていち早く動き出すことも必要です。現在注力しているADCや抗体技術に続く、次世代のコアとなる治療手段(モダリティ)の創生において、重要な要素として位置づけているのが、細胞・遺伝子技術です。技術に更なる磨きをかけ、革新的な医薬品の創出につながる新技術を開発していきたいと考えています。
現時点で研究テーマとして扱っているモダリティは非常に多岐にわたっています。将来を見据え、どのモダリティがより多くの患者さんへ貢献できるか、どのモダリティを自社の技術的強みとして開発して行くかなどを多角的に評価し、各々のモダリティに対する成長性・有望性を客観的に判断しています。今後は、限られたリソースの中で注力すべきモダリティを見極めることが、より重要になると考えています。


          アンメットメディカルニーズの高い疾患
    
 抗体  ADC  次世代合成医薬品  核酸医薬
     
 バイスペシフィック抗体  細胞治療 LNP/mRNA 

 遺伝子治療

第一三共のマルチモダリティ戦略

バイオ医薬品メーカーの第一三共として

今後、バイオ医薬品メーカーの第一三共としてのプレゼンスを高めるため、ますます重要となるのが、人材です。従来の第一三共には、バイオ医薬品の開発・製造に精通する技術者が少なかったため、社内外から人材を確保してきました。併せて、バイオ医薬品の創薬技術と製造技術に関わる組織を配置し、創薬から製造までの広範囲でバイオ技術に関する知識やノウハウを共有することで、バイオに強い人材が育つ組織作りを行って来ました。
着々と、外部からの経験者は集まってきていますが、今後は全く異なる分野にいた方でも、バイオ領域で活躍できるように育てていける、育成システムの構築に取り組みたいと考えています。私たちの挑戦は続きますが、一つひとつ壁を乗り越えながら「このプロジェクトに関われてよかった」「こういうところが誇りだね」と一人ひとりが語り合える組織・会社を目指していきたいと思います。

 

 
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籔田 雅之
Masayuki Yabuta
第一三共株式会社
バイオロジクスユニット長
常務執行役員

1985年サントリー株式会社医薬事業部に入社。組換えタンパク・ペプチドの製造法開発と製造設備建設に従事し、多くのバイオ医薬品に対する製造法開発を経験。2010年から第一三共に所属し、製薬技術本部、研究開発本部を経て、2017年よりバイオロジクス本部の設立と共に現職。


*1 抗体薬物複合体(Antibody Drug Conjugate):抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています

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