第一三共グループの子会社である第一製薬株式会社(社長:森田 清、以下「第一」)は、「シンクロメッドELポンプ」(以下「ポンプ」)および「インデュラカテーテル」(以下「カテーテル」)が、本年4月1日付で保険 収載されたのを受け、第一が製造販売承認を取得した抗痙縮剤「ギャバロン髄注」(一般名:バクロフェン、以下「髄注」)と合せて、国内販売を開始します。 なお、ポンプおよびカテーテルは日本メドトロニック株式会社(社長:スティーブン・R・ラニーブ、以下「メドトロニック」)が製造販売承認を取得したもの です。
髄注とポンプ、カテーテルは、既存治療で効果が上がらない重度痙性麻痺を適応とするITB(Intrathecal Baclofen;髄腔内バクロフェン投与)治療法に用いられます。ITB治療法には、その他にプログラマが使われます。ポンプは下腹部皮下に植込まれ、 カテーテルを通じて髄注を髄腔内へ長期間にわたり投与し、重度痙性麻痺患者が抱える強い痙縮を抑えます。髄注は2~3ヵ月ごとに体外からポンプ内へ補充さ れます。
ITB治療法では、髄注を作用部位である脊髄(GABAB受容体)近傍 に直接投与することから、微量で顕著な改善効果が国内の臨床試験でも確認されています。髄注用量は、副作用を抑え、有効性を高めるために患者の状態や投与 時間の経過により細密な調整を必要とします。このためポンプは、患者の状態に併せて髄注用量、投与モードをプログラマで自由に設定・変更することで、最適 な治療を提供します。
髄注とポンプ、カテーテルは、これまでに世界22ヵ国において約5万人に使用実績があります。わが国では希少疾病用医薬品および医療機器の指定を受 け、2002年2月より第一とメドトロニックが共同で臨床試験を実施し、ポンプおよびカテーテルは昨年3月、髄注は同4月に製造販売承認を取得しました。 髄注は昨年9月16日に薬価収載され、同12月12日に発売されましたが、ポンプおよびカテーテルの保険収載(本年4月1日)までは積極的な販売活動を控 えておりました。
今後は、ITB治療法の普及により、これまで治療効果が上がらず、重度痙性麻痺に苦しんでいた多くの患者に新たな治療の選択肢を提供し、QOL改善に貢献することが期待されます。
<参考資料>
≪ギャバロン髄注≫
薬効分類名 |
抗痙縮剤(日本標準商品分類871249) |
商品名 |
ギャバロン髄注(一般名バクロフェン) |
効能・効果 |
脳脊髄疾患に由来する重度の痙性麻痺(既存治療で効果不十分な場合に限る) |
貯法・使用期限 |
貯法:室温保存、使用期限:3年間 |
規制区分 |
劇薬、指定医薬品、処方せん医薬品 |
承認年月日 |
2005年4月11日 |
再審査期間 |
承認後10年間 |
薬価基準価格 |
髄注0.005% 1 mL:0.05 mg/1 mL 1管 1,107円
髄注0.05% 20 mL:10 mg/20 mL 1管 22,119円
髄注0.2% 5 mL:10 mg/5 mL 1管 22,119円 |
≪シンクロメッドELポンプ≫
販売名 |
シンクロメッドELポンプ |
使用目的 |
脳脊髄疾患に由来する重度の痙性麻痺(既存治療で効果不十分な場合に限る)を対象に、バクロフェン髄注を髄腔内投与するために使用する薬液注入用ポンプ |
寸法(直径×厚さ)、重量 |
70.4mm×27.5mm、205g |
リザーバ使用可能容量 |
18mL |
流 量 注入レート
注入精度 |
最小:0.048mL/日、最大:0.9mL/時
±15% |
再審査期間 |
承認後7年間 |
≪インデュラカテーテル≫
販売名 |
インデュラカテーテル |
使用目的 |
植込み型薬液注入ポンプに接続して使用する髄腔内薬剤投与用カテーテル |
カテーテル長 |
遠 位:381mm 近 位:660mm |
材 質 |
X線不透過性シリコンゴム |
≪カテーテルパッサー≫
モデル番号 |
8591-38 |
8591-60 |
使用目的 |
インデュラカテーテルを皮下に通すための穿孔器 |
全 長 |
38cm |
60cm |
材 質 |
ステンレス鋼/ポリプロピレン |
≪シンクロメッドプログラマ≫
販売名(モデル番号) |
シンクロメッドプログラマ(8821) |
使用目的 |
植込み型薬液注入ポンプの非侵襲的プログラミングを行うためのプログラマ |
寸法、重量 |
高さ14.1cm×幅38.5cm×奥行き32.1cm、6.6kg |
※上記医療機器製品は、いずれも製造販売元:日本メドトロニック、販売元:第一製薬、承認年月日:2005年3月25日。
- ITB治療法の製品および体内植込みイメージ -
ギャバロン髄注(0.005%、0.05%、0.2%)
ポンプシステム体内植込み(イメージ) |
ポンプとカテーテル
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プログラマ(用量の設定・変更)
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重度痙性麻痺
脳や脊髄の神経の損傷により、脊髄での反射が亢進し、強い痙縮(筋肉が固くこ わばること)を発現した病態のことを言い、スパスム(筋攣縮)やクローヌス(間代性痙攣)、疼痛、胸部・腹部の締め付け感を伴うことが多くみられます。中 軽度の痙性麻痺に対する治療法としては、抗痙縮剤の内服療法が用いられますが、重度の痙性麻痺の場合は改善効果が乏しく、有効な治療法はほとんどありませ んでした。原疾患としては、脊髄損傷、頭部外傷、脳性麻痺、脳卒中、ならびに多発性硬化症や脊髄小脳変性症などの脊髄変性疾患が挙げられます。
承認条件
髄 注(ポンプも同様)の承認条件として、「市販後の一定期間は、使用症例の全例を登録制として使用成績調査を行うとともに、全ての重篤な有害事象を把握する 適切な措置を講じること。」および「本剤の安全性および有効性を十分に理解し、施術に関する十分な知識・経験のある医師によってのみ用いられるよう、本剤 を納入する前に予め講習(ポンプシステムに関する事項を含む)を実施する等の適切な措置を講じること。」の2点が付されました。
日本メドトロニック株式会社
米 国ミネソタ州ミネアポリス市に本社を置く心臓ペースメーカーや除細動器など埋込み機器で世界を代表する医療機器企業のMedtronic, Inc.が1975年に設立した日本法人。Medtronic, Inc.の2005年4月期の売上高は約100億ドル(約1兆1千5百億円)、従業員数は世界で約3万2千人。
以上