当社の関連財団法人である三共生命科学研究振興財団(東京都港区、理事長:池上康弘)は、2003 年11 月財団設立20 周年記念事業として、旧三共株式会社の初代社長である高峰譲吉博士(社長在職;1913 年3 月~1922 年7 月)の研究業績に因み、「高峰記念三共賞」を創設しました。このたび、2007 年度の第5 回受賞者として、満屋裕明博士(熊本大学大学院医学薬学研究部・教授;56歳)を選出しましたのでお知らせします。
贈呈式は12 月5 日(水)ホテルオークラにて行います。
なお、当財団は設立以来、生命科学分野における独創的な研究に対する研究助成(2 年間)、国際交流の援助(外国人学者招聘、わが国研究者の海外派遣及び国際シンポジウムの開催援助)、三共"フェローシップ"奨学助成(2 年間)などの助成事業を行っております。
(参考)受賞研究テーマ「AIDSに対する治療法の研究・開発」
満屋博士は1975 年熊本大学医学部を卒業後、1982 年より米国国立癌研究所(NCI)に留学、ヒトT 細胞白血病ウイルス(HTLV-1)感染による免疫不全の発症病理の研究を開始し、当時としては先端的な手法を用いてHTLV-1の標的であるヒトCD4 陽性細胞をクローンレベルで作成して研究を進め大きな成果を挙げられましたが、折りしも、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症と後天性免疫不全症候群 (HIV)が世界的な保健衛生上の問題であることが報告されるに及んで、1984 年NCI の他の研究者と共にHIV 感染症に対する治療法の研究・開発に着手されました。
1985 年に、Azidothymidine(AZT)、dideoxyinosine(ddI)、dideoxycytidine(ddC)がHIV に対して強力な活性を有することを発見し、前臨床と臨床開発に貢献しました。これらは世界で最初のAIDS 治療薬となりました。更にこのような逆転写酵素阻害剤の抗HIV 活性発揮に関わる細胞代謝、HIV の薬剤耐性発現機序の解明を進め、AIDS 治療の基礎を築きました。また、侵入阻害剤の研究・開発を進め、次世代型のプロテアーゼ阻害剤darunavir の臨床導入にも直接貢献しました(2006 年FDA 承認)。
一人の研究者が一つの治療開発領域でこれほど多大な影響を及ぼした例は他に類を見なく、「高峰記念三共賞」としてふさわしい顕著な成果を収められております。
(所属機関・役職)
熊本大学大学院医学薬学研究部
血液内科・膠原病内科・感染免疫診療部 教授
(主な略歴)
1975 年 3 月 熊本大学医学部卒業
1980 年 2 月 熊本大学医学部第二内科助手
1982 年 4 月 医学博士(熊本大学)
1982 年10 月 米国国立癌研究所客員研究員
1984 年 2 月 同 上級研究員
1988 年12 月 同 主任研究員
1991 年 7 月 同 臨床癌プログラム・内科療法部門・レトロウイルス感染症部部長
1997 年 4 月 熊本大学医学部内科学第二講座 教授
2000 年 4 月 同 付属病院感染免疫診療部部長(兼任)
2001 年 7 月 同 付属病院副病院長(兼任 ~2005 年3 月)
2003 年 4 月 京都大学ウイルス研究所客員教授(兼任 ~2005 年3 月)