~ARQ197とエルロチニブとの併用により無増悪生存期間および全生存期間が示唆され、有効性に期待~
第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「第一三共」)とArQule社(本社:米国マサチューセッツ州)は、2010年米国臨床腫瘍学会(American Society of Oncology ASCO)年次総会において、エルロチニブとの併用によりARQ197が化学療法剤に無効な進行性の非小細胞肺癌患者さんにおいて全生存期間の延長が期待できる第2相臨床試験結果を発表したのでお知らせします。
本試験は、EGFR(上皮増殖因子受容体)阻害薬による治療を受けておらず、少なくとも初回の化学療法剤による治療が無効となった167名の患者さんを対象とした無作為化二重盲検第Ⅱ相比較試験です。患者さんは、エルロチニブとARQ197もしくは、プラセボどちらかとの併用治療を受けました。
プラセボとエルロチニブ併用治療群の患者さんの全生存期間の29.4週に対して、ARQ197とエルロチニブの併用治療群の患者さんでは36.6週で、24%の延長(未補正ハザード比=0.88、p=0.50)が認められたとの試験結果をTexas Southwestern Medical Center の血液腫瘍学部門長のJohn H.Schiller博士が発表しました。
あらかじめ規定していた非扁平上皮細胞癌患者さんのサブグループ(117名)を対象とした解析では、ARQ197とエルロチニブの併用治療群の患者さんの全生存期間の中央値は43.1週で、プラセボとエルロチニブ併用治療群の患者さんでの29.4週と比べて47%の生存期間延長(未補正ハザード比=0.72、p=0.19)が認められました。患者背景情報のうち、予後決定因子であるEGFRおよびKRASの遺伝子変異の有無で両群の患者数を比較すると、プラセボ群に有利な条件であったため、両群間の主な予後因子の不均衡を補正した後、このサブグループを探索的にコックス回帰分析したところ、ARQ197併用治療群の全生存期間中央値はプラセボ併用治療群に対して統計的に有意(p<0.05)に延長したことが認められました。
以前、ArQule社が発表したように、log-rank test による解析では、プラセボとエルロチニブとの併用治療に対して、ARQ197とエルロチニブとの併用治療により本試験の主要評価項目である無増悪生存期間中央値を66%延長させましたが、統計学的に有意差は認められませんでした(ハザード比=0.81)。あらかじめ規定していた非扁平上皮細胞癌患者さんのサブグループ(117名)を対象とした解析では、ARQ197投与による無増悪生存期間の延長はより顕著でした。
Schiller博士は「今回の比較試験データから、無増悪生存期間と同様全生存期間の延長が示されており、ARQ197が患者さんに福音をもたらす可能性が示唆された。また、安全性面では、ARQ197とエルロチニブの併用療法は忍容性があり、単剤投与と同等でコントロール可能な副作用であった。」と述べております。
本試験では、ARQ197とエルロチニブ併用の効果を評価するため、エルロチニブ単独治療で効果のなかった患者さんを対象としたクロスオーバー群が含まれております。RECIST(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)評価基準に従うと、効果判定可能な23名のクロスオーバー患者さんのうち2名がPR(Partial response)、9名がSD(stable disease)でした。
第一三共のChief Scientific Officerで第一三共ファーマデベロップメント社長のGlenn Gormley博士は「試験に組み入れられた全ての患者および非扁平上皮細胞肺癌患者の両方において、全生存期間の結果は、以前報告された無増悪生存期間の知見と一致していると考えられ、将来への自信を深めるものである。全てのデータは次のステージの臨床試験計画の検討や、当局との議論に役立つだろう。」と述べております。
c-MetとARQ197について
ARQ197は、経口可能な低分子のc-Met受容体チロシンキナーゼ阻害剤です。エルロチニブはタルセバTMの商品名で販売されているEGRFチロシンキナーゼ阻害剤です。
ARQ197は、c-Met関連性の軟部組織肉腫、肝細胞癌、膵臓腺癌、胚細胞腫瘍、結腸直腸癌などの複数の癌種に対する効果を単剤および他剤との併用の臨床試験で確認しているところです。
c-Met受容体のチロシンキナーゼが異常に亢進すると、癌細胞の増殖、生存、血管新生、浸潤、転移など様々な細胞内シグナル伝達に関与することが知られております。非臨床試験の結果から、ARQ197は、ヒト癌細胞株のc-Met活性化を阻害し、複数のヒト腫瘍異種移植片に対して抗腫瘍活性を示すことが明らかとなっております。これまでの臨床試験では、ARQ197による治療は忍容性がよく、複数の癌種や用量で腫瘍反応や安定状態の延長が確認されております。
2008年12月、第一三共とArQule社は、日本、中国(香港含む)、韓国、台湾を除く全世界でARQ197の共同開発・商業化のライセンス契約を締結しております。