第一三共株式会社(本社:東京都中央区)の関連公益財団法人である第一三共生命科学研究振興財団(東京都港区、理事長:鈴木 良彦、以下「当財団」)は、2011年度の第9回「高峰記念第一三共賞」の受賞者として、間野博行博士(自治医科大学教授)を選出しましたのでお知らせします。
当財団は、2003年11月に設立20周年記念事業として、旧三共株式会社の初代社長である高峰譲吉博士(社長在職;1913年3月~1922年7月)の研究業績に因み、「高峰記念三共賞(現 高峰記念第一三共賞)」を創設し、毎年、生命科学特に疾病の予防と治療に関する諸分野の基礎的研究並びに臨床への応用的研究において、その進歩・発展に顕著な功績をあげ、活躍中の研究者に贈呈しております。
なお、当財団は設立以来、生命科学分野における独創的な研究に対する研究助成、国際交流の援助(海外共同研究支援助成及び国際シンポジウムの開催助成)などの助成事業を行っております。
(参考)
受賞研究テーマ「肺がん原因遺伝子の発見と分子診断法・分子標的療法の実現」
間野博士は1984年東京大学医学部を卒業後、米国St.Jude Children’s Research Hospitalへ留学し、その後、東京大学医学部第三内科助手を経て、自治医科大学医学部ゲノム機能研究部教授に就任している。
間野博士は、組換えレトロウイルスを用いた臨床検体のがん遺伝子スクリーニング法を開発した。それを用いて肺腺がん患者外科切除標本より新規融合型がん遺伝子(EML4-ALK)を発見し、固形腫瘍(肺がん)においても染色体転座が発がんの中心的役割を担うことを証明した。EML4-ALK遺伝子を肺胞上皮特異的に発現するトランスジェニックマウスを用いて、EML4-ALKが同遺伝子陽性肺がんにおける中心的発がん原因であり、その機能を抑制することが全く新しい肺がんの分子標的療法となることを証明した。ALK阻害剤のヒトにおけるEML4-ALK陽性肺がんに対する奏功率は約9割で、その中には完全寛解を含む治療効果が確認されている。以上、間野博士は、画期的な技術の開発により、新しいがん治療の進歩に大きく貢献している。
(所属機関・役職)
自治医科大学医学部ゲノム機能研究部教授、
東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座 特任教授兼務
(主な略歴)
1984年3月 東京大学医学部卒業
1989年5月 米国St.Jude Children’s Research Hospital生化学部門客員研究員
1991年8月 東京大学医学部第三内科 文部教官助手
1993年8月 自治医科大学分子生物学講座 講師
1995年6月 自治医科大学分子生物学講座 助教授
2001年6月 自治医科大学医学部ゲノム機能研究部 教授、現在に至る
2009年9月 東京大学大学院医学系研究科ゲノム医学講座 特任教授、現在に至る
(主な受賞歴)
2008年 日本癌学会 JCA-Mauvernay Award
2008年 日本医師会 医学賞
2009年 東京テクノ・フォーラム21 ゴールドメダル賞
2009年 佐川がん研究助成振興財団 佐川特別研究助成賞
2009年 高松宮妃癌研究基金 学術賞
2010年 持田記念学術賞
2010年 武田医学賞
2010年 上原賞
2011年 文部科学大臣表彰 科学技術賞