第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、当社が東京大学医科学研究所 藤堂具紀教授(以下「藤堂教授」)と共同で申請したがん治療用ウイルス(G47Δ*1)が、本年度始まった医療機器・体外診断用医薬品・再生医療等製品の先駆け審査指定制度*2の対象品目に指定されましたので、お知らせいたします。
藤堂教授は、今回指定を受けたG47Δを用いたウイルス療法(以下「本治療法」)により、悪性神経膠腫*3を対象とした第2相臨床試験(治験)を2015年に開始しております。また、既に他のがん腫においても、非臨床試験・臨床試験が始まっており、これまでに得られたデータより、適応拡大の可能性が示唆されております。今後、当社は、藤堂教授と共同で、これらがん腫における本治療法の開発を実施して行く予定です。
これからも、当社は、医薬品開発を通じ、より多くの患者さんや医療関係者のニーズに応え、新たな治療の選択肢を提供することで医療に貢献してまいります。
以 上
*1 G47Δを用いたがん治療法の特徴
G47Δは、がん細胞でのみ増殖可能となるよう設計された人為的三重変異を有する制限増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型(第三世代がん治療用単純ヘルペスウイルス1型)であり、これを用いたがん治療法は、がんの治療体系を抜本的に変える可能性のある新規で先進的なものです。現在、複数のがん治療用ウイルスの開発が行われておりますが、本治療法は、非臨床試験・臨床試験で既に高い安全性や有効性が確認されています。
*2 先駆け審査指定制度
世界に先駆けて革新的医薬品・医療機器等の日本での早期実用化を目指す「先駆けパッケージ戦略」(平成26年6月17日厚生労働省取りまとめ)の重点施策の1つで、生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して極めて高い有効性が期待される医薬品を指定し、世界でも最先端の治療薬を最も早く日本の患者に提供することを目指す制度です。開発の比較的早期の段階に対象医薬品が指定され、治験相談・承認審査において優先的な取扱いがなされることとなっています。本年度は試行的な取り組みとして実施されています。
*3 悪性神経膠腫
神経膠腫は、神経細胞の支持組織であるグリア細胞から発生する原発性脳腫瘍であり、発生原因は解明されていません。藤堂教授が実施中の上記臨床試験では、神経膠腫の中で、最も悪性度の高い膠芽腫を対象にしており、膠芽腫の国内での年間発症者数は約1,000人と推定されています。神経膠腫の特徴は脳組織内への腫瘍細胞の浸潤性が高く、増殖速度が速いことで、中でも膠芽腫はその傾向が強く、患者の5年生存割合はわずか6%に過ぎず、根本的治療法が確立されていない未充足医療ニーズの高いがんです。