第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)*1であるDS-8201aの安全性と有効性を評価する第1相臨床試験の結果が、デンマークで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO)のLate Breaking Sessionで発表されましたので、その概要についてお知らせいたします。
DS-8201aの第1相臨床試験は、乳がん及び胃がん患者を対象とするパート1試験と乳がん、胃がん及びそれ以外のがん患者も対象とするパート2試験の二つのパートから成りますが、今回はパート1の試験データを発表しました。
パート 1の主要評価項目は、がん患者における最大耐用量を決定するための安全性と忍容性で、重要な副次評価項目は有効性や薬物動態等です。
本試験データにおいて、DS-8201aの用量制限毒性は観察されず、また十分な忍容性が確認されました。患者22名(乳がん16名、胃がん5名、胃食道接合部腺がん1名)に対し、3週間毎に体重1kg当たり0.8~8.0mgが投与されましたが、最大耐用量には達しませんでした。
T-DM1(トラスツズマブにエムタンシンを結合させた抗体薬物複合体(ADC))の前治療を受けた患者12名及びHER2発現の低い患者5名を含む評価可能な患者20名における予備的な有効性評価においては、客観的奏功率*2は35%、病勢コントロール率*3は90%でした。
T-DM1の前治療を受けた評価可能なHER2発現の乳がん患者12名のサブ解析においては、客観的奏効率*2は42%、病勢コントロール率*3は92%でした。
また、本試験における薬物動態プロファイルは良好でした。
当社は、第1相臨床試験のパート1試験で得られた知見をさらに確認・評価するため、現在、4つの異なるHER2発現患者においてDS-8201aの安全性と有効性を評価するパート2試験を実施中です。
以 上
*1 抗体薬物複合体(ADC) :抗体と低分子医薬を適切なリンカーを介して結合させた医薬群
*2 客観的奏功率 :腫瘍が完全に消失または30%以上減少した割合
*3 病勢コントロール率 :客観的奏功率に、腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)を加えた割合
第一三共のがん事業について
当社は、世界トップ水準のサイエンス(科学的知見、技術)を応用し、がん患者さんのための革新的な治療を提供していきます。
当社は、がん領域の開発パイプラインの拡充を進めており、現在、固形がんと血液がんの両領域で20以上の新規の低分子および抗体医薬を保有しています。第3相臨床試験中の開発品目には、FLT3-ITD阻害剤キザルチニブ(目標適応:急性骨髄性白血病)、CSF-1R阻害剤ペキシダルチニブ(目標適応:腱滑膜巨細胞腫、固形がんにおける抗PD-1抗体との併用試験(第1/2相)も実施中)、MET阻害剤チバンチニブ(目標適応:肝細胞がん)等があります。