第一三共株式会社(本社:東京都中央区)の関連公益財団法人である第一三共生命科学研究振興財団(東京都中央区、理事長:中山 讓治、以下「当財団」)は、2017年度の第15回「高峰記念第一三共賞」の受賞者として、小川誠司博士(京都大学大学院医学研究科教授)を選出しましたのでお知らせいたします。
当財団は、2003年11月に創立20周年記念事業として、旧三共株式会社の初代社長である高峰譲吉博士(社長在職;1913年3月~1922年7月)の研究業績に因み、「高峰記念三共賞(現 高峰記念第一三共賞)」を創設し、毎年、生命科学、特に疾病の予防と治療に関する諸分野の基礎的研究並びに臨床への応用的研究において、その進歩・発展に顕著な功績をあげ、活躍中の研究者に贈呈しております。
なお、当財団は設立以来、生命科学分野における独創的な研究に対する研究助成、国際交流の援助(海外共同研究支援助成及び国際シンポジウムの開催助成)などの助成事業を行っております。
以 上
(参考)
受賞研究テーマ「成人T細胞性白血病の分子基盤とがんの免疫回避に関わるメカニズムに関する研究」
小川博士は東京大学医学部医学科を卒業後、日本学術振興会特別研究員、東京大学医学部附属病院第三内科助手、東京大学医学部附属病院造血再生医療寄付講座特任准教授、21世紀COEプログラム特任准教授、東京大学がんゲノミクスプロジェクト特任准教授を経て、2013年より京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座教授に就任。
小川博士は、300症例を超える成人T細胞性白血病(ATL)の大規模なゲノムシーケンス解析によって、ATLの発症に関わる遺伝子異常の全体像の解明に成功した。この成果はATLの病態解明のみならず、ATL治療における多数の治療標的分子を同定した研究として高く評価されている。
一方、小川博士らは、スーパーコンピュータを用いた1万例を超えるがん試料の解析を含む一連の研究を通じて、(1)ATLの約1/4の症例で見出されたPD-L1遺伝子3'-UTRの構造異常が、PD-L1の著しい過剰発現を介したATL細胞の免疫監視からの回避に重要な役割を担っていること、また、(2)同異常が、他の悪性リンパ腫や胃がんをはじめとする多くの主要ながんにおいてもしばしば見出されること、を明らかにすることにより、がんの免疫回避に関わるメカニズムの解明に大きく貢献した。本研究成果に基づいて、現在、PD-L1遺伝子3'-UTRの異常が陽性のATLに対する抗PD-1抗体(Nivolumab:オプジーボ)の臨床効果を確認する第1相臨床試験が進行中である。
(所属機関・役職)
京都大学大学院医学研究科 腫瘍生物学講座 教授
(主な略歴)
1988年3月 東京大学医学部医学科卒業
1993年3月 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了 医学博士
1996年2月 日本学術振興会特別研究員
1997年4月 東京大学医学部附属病院第三内科助手
2002年9月 東京大学医学部附属病院造血再生医療寄付講座特任准教授
2006年10月 21世紀COEプログラム特任准教授
2008年4月 東京大学がんゲノミクスプロジェクト特任准教授
2013年4月 京都大学大学院医学研究科腫瘍生物学講座教授
(主な受賞歴)
1996年 ベルツ賞
1997年 日本癌学会奨励賞
2010年 日本癌学会Mauverney賞
2012年 2012年ナイスステップ研究者
2013年 日本血液学会賞
2013年 日本医師会医学賞
2014年 佐川特別賞
2014年 持田記念学術賞
2017年 高松宮妃癌研究基金学術賞
2017年 上原賞
2017年 科学技術分野の文部科学大臣表彰