第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、HER2発現患者を対象としたDS-8201(HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)*1)の日米共同第1相臨床試験(以下「本試験」)における安全性と有効性に関する最新データについて、米国シカゴで開催中のASCO 2018で発表しますので、その概要についてお知らせいたします。
安全性については、HER2発現患者241名において、グレード3*2の有害事象として、好中球数減少(15.4%)、貧血(14.9%)、白血球数減少(12.4%)、血小板数減少(10.4%)等がみられました。患者23名(9.5%)が有害事象のため治療を中止しましたが、そのうちグレード5*2の有害事象として、肺臓炎(4名)、病勢進行(2名)、間質性肺疾患(1名)、腸閉塞(1名)、誤嚥性肺炎(1名)、肺炎(1名)が報告されました。間質性肺疾患/肺臓炎については、それらの可能性がある症例を含めて全て、間質性肺疾患外部判定委員会にて現在精査中です。
予備的有効性については、前治療を受けたHER2低発現の再発・転移性乳がん患者34名において、全奏効率*3は50.0%(17名/34名)、病勢コントロール率*4は85.3%(29名/34名)、予備的な奏効期間*5中央値は11.0ヶ月、予備的な無増悪生存期間*6中央値は12.9ヶ月でした。
T-DM1(トラスツズマブにエムタンシンを結合させたADC)による前治療を受けたHER2陽性の再発・転移性乳がん患者99名において、全奏効率は54.5%(54名/99名)、病勢コントロール率は93.9%(93名/99名)で、奏効期間および無増悪生存期間はまだ中央値に達していません。
トラスツズマブによる前治療を受けたHER2発現の再発・進行性の胃がん患者44名において、全奏効率は43.2%(19名/44名)、病勢コントロール率は79.5%(35名/44名)、予備的な奏効期間中央値は7.0ヶ月、予備的な無増悪生存期間中央値は5.6ヶ月でした。
前治療を受けたHER2発現の再発・進行性の大腸がんや非小細胞肺がん等の患者31名において、全奏効率は38.7%(12名/31名)、病勢コントロール率は83.9%(26名/31名)、予備的な奏効期間中央値は12.9ヶ月、予備的な無増悪生存期間中央値は12.1ヶ月でした。
DS-8201については、現在、本試験に加え、HER2発現の乳がん、胃がん、大腸がん及び非小細胞肺がんを対象とした第2相臨床試験を実施中です。本試験の最新データより、HER2の発現程度によらず、また幅広いがん種においてDS-8201の有用性が示唆されたことから、今後の開発を加速してまいります。
以 上
*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬群で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めた薬剤です。
*2 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。
*3 全奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。確定した全奏効率を意味します。
*4 病勢コントロール率とは、全奏効率に、腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)の患者の割合を加えたものです。
*5 奏効期間とは、腫瘍の完全消失(完全奏効)または30%以上減少(部分奏効)のどちらかの基準が最初に満たされた時点から、再発または増悪が客観的に確認された最初の日までの期間です。
*6 無増悪生存期間とは、治療中及び治療後に病勢進行せず安定した状態の期間です。
第一三共のがん事業について
当社のがん事業は、世界最先端のサイエンス(科学的知見、技術)を応用し、がん患者さんのための革新的な治療を提供することを使命としています。
当社は、日本のがん領域ラボラトリー(バイオ・がん免疫・低分子)と米国プレキシコン(低分子)の強力な研究体制を通じて、がん領域の開発パイプラインの拡充を進めており、抗体薬物複合体(ADC)フランチャイズ、急性骨髄性白血病(AML)フランチャイズおよびブレークスルー・サイエンスを3つの柱として、2025年までの8年間に7つの革新的新薬の上市を目指します。
主要開発品目には、抗HER2抗体薬物複合体DS-8201(目標適応:乳がん、胃がん、その他固形がん)、FLT3阻害剤キザルチニブ(目標適応:急性骨髄性白血病)、CSF-1R阻害剤ペキシダルチニブ(目標適応:腱滑膜巨細胞腫)等があります。