第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、trastuzumab deruxtecan*1(DS-8201、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)*2、以下「本剤」)の日米共同第1相臨床試験(以下「本試験」)において、非小細胞肺がん患者の安全性と有効性に関する最新データについて、カナダのトロントで開催中の第19回世界肺がん学会議(WCLC 2018)で発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。
安全性については、前治療を受けたHER2発現またはHER2変異のある非小細胞肺がん患者18名において、グレード3*3以上の主な有害事象(発現率>10%)は好中球数減少(11.1%)でした。また、グレード5*3の肺臓炎が1例に認められましたが、間質性肺疾患外部判定委員会にて「本剤との因果関係なし」と判定されました。
予備的有効性については、前治療を受けたHER2発現またはHER2変異のある非小細胞肺がん患者17名において、全奏効率*4は58.8%(10名/17名)、病勢コントロール率*5は88.2%(15名/17名)、奏効期間*6中央値は9.9ヶ月、無増悪生存期間*7中央値は14.1ヶ月でした。
対象患者17名のうち、HER2変異のある患者11名においては、全奏効率は72.7%(8名/11名)、病勢コントロール率は100%(11名/11名)、奏効期間中央値は11.5ヶ月、無増悪生存期間中央値は14.1ヶ月でした。
本剤については、現在、本試験に加え、さまざまながん種を対象とした臨床試験の一環として、HER2過剰発現またはHER2変異のある再発・進行性非小細胞肺がんを対象としたグローバル第2相臨床試験を実施中です。本試験の最新データより、非小細胞肺がんにおいても本剤の有用性が示唆されたことから、今後の開発を加速してまいります。
以 上
*1 trastuzumab deruxtecanの参考字訳:トラスツズマブ デルクステカン
*2 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬群で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めた薬剤です。
*3 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。
*4 全奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。確定した全奏効率を意味します。
*5 病勢コントロール率とは、全奏効率に、腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)の患者の割合を加えたものです。
*6 奏効期間とは、腫瘍の完全消失(完全奏効)または30%以上減少(部分奏効)のどちらかの基準が最初に満たされた時点から、再発または増悪が客観的に確認された最初の日までの期間です。
*7 無増悪生存期間とは、治療中及び治療後に病勢進行せず安定した状態の期間です。
第一三共のがん事業について
当社のがん事業は、世界最先端のサイエンス(科学的知見、技術)を応用し、がん患者さんのための革新的な治療を提供することを使命としています。
当社は、日本のがん領域ラボラトリー(バイオ・がん免疫・低分子)と米国プレキシコン(低分子)の強力な研究体制を通じて、がん領域の開発パイプラインの拡充を進めており、抗体薬物複合体(ADC)フランチャイズ、急性骨髄性白血病(AML)フランチャイズおよびブレークスルー・サイエンスを3つの柱として、2025年までの8年間に7つの革新的新薬の上市を目指します。
主要開発品目には、抗HER2抗体薬物複合体trastuzumab deruxtecan(DS-8201、目標適応:乳がん、胃がん、その他固形がん)、FLT3阻害剤キザルチニブ(目標適応:急性骨髄性白血病)、CSF-1R阻害剤ペキシダルチニブ(目標適応:腱滑膜巨細胞腫)等があります。