第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、当社が保有するDS-1062(TROP2に対する抗体薬物複合体(ADC)*、以下「本剤」)について、グローバルな開発及び商業化契約をアストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)と締結しましたので、お知らせいたします。
当社とアストラゼネカは、全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)において、本剤の単剤療法及び併用療法を共同で開発し、商業化します。当社は本剤の製造及び供給を担います。
本契約は、当社のADCにおいて、エンハーツ®に続く2つ目のアストラゼネカとのグローバル提携となります。本契約の下、当社はアストラゼネカから10億米ドルの契約時一時金を受け取ります(本契約締結時に3.5億米ドル、その1年後に3.25億米ドル、その2年後に3.25億米ドル)。また、当社は、開発マイルストンの達成により最大10億米ドル、販売マイルストンの達成により最大40億米ドルを受け取ります。すべての開発及び販売マイルストンが達成された場合、当社の受取総額は最大60億米ドルとなります。
本剤の全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)における利益と開発・販売等費用は、両社で折半します。本剤の売上収益は、日本、米国、当社が拠点を有する欧州及びその他地域の複数国においては当社が計上し、中国、オーストラリア、カナダ、ロシア及びその他地域においてはアストラゼネカが計上します。
当社の代表取締役社長 兼 CEOの眞鍋 淳は、「DS-1062は、当社の次期中期経営計画の柱となるADCの1つで、肺がんや乳がんなど様々ながん種においてベスト・イン・クラスになる可能性があります。がん領域のグローバル事業に豊富な経験と高い専門性を持つアストラゼネカとの戦略的提携により、本剤をより早く、より多くのがん患者さんに届けることが可能となります。今後は、エンハーツ®と同様に、DS-1062の製品価値の最大化に向けた戦略を共同で立案・実行していきます。」と述べています。
アストラゼネカの最高経営責任者(CEO)のPascal Soriot(パスカル・ソリオ)は、「このADCは、肺がんだけでなく、TROP2 を発現している乳がんやその他のがんにも大きな可能性を秘めています。今回の第一三共との新たな提携と、エンハーツ®の上市成功を通じて、がん領域におけるパイプラインとリーダーシップをさらに拡大することができることを嬉しく思います。我々は、現在がん領域でブロックバスターの可能性を秘めた開発品を6つ持っており、開発初期および後期には、さらに多くのパイプラインを有しています。」と述べています。
なお、当社が受け取る契約時一時金および開発マイルストンは、契約上の履行義務が存在する期間にわたって売上収益に計上されます。当社の2021年3月期の連結業績に与える影響につきましては、今後適切な時期にお知らせいたします。本提携は、当社の中長期的な企業価値・株主価値の向上に貢献することが期待されます。
以 上
* 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。
DS-1062について
DS-1062は、当社独自のADC技術を使ってリンカーを介して抗TROP2抗体にトポイソメラーゼⅠ阻害剤を結合させた薬剤です。
現在、手術不能で進行・転移性の非小細胞肺がんとトリプルネガティブ乳がんを対象とした第1相臨床試験を日米において実施しております。