当社の取り組み
1. ワクチン及び治療薬に関する研究開発への貢献
当社は、新型コロナウイルス感染症(以下、「COVID-19」)に対するワクチンおよび治療薬の研究開発に、当社の持つ研究財産及び知識を最大限に活用し、かつ外部機関とも連携して積極的に取り組んでおります。
1-1. 新型コロナウイルスワクチンの開発
当社は、COVID-19の予防を目指し、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」)が支援する「新型コロナウイルス(2019-nCoV*1)の制圧に向けての基盤研究」*2(研究代表者:東京大学医科学研究所 河岡義裕 教授)に参画し、当社が見出した新規核酸送達技術*3を用いた「新型コロナウイルス(2019-nCoV)に対するmRNAワクチン開発」を推進しました。
当社は本mRNAワクチンの開発を最優先プロジェクトの1つに位置づけ、AMEDが実施する「ワクチン開発推進事業*4」からの支援を得て、2021年3月から第1/2相臨床試験、2021年11月には国内第2相臨床試験を開始しました。更に国内におけるワクチン接種の情勢に鑑み、2022年1月にはmRNAワクチンの追加投与によるブースター効果を検討する国内臨床試験を優先的に開始し、引き続き第3相臨床試験を2022年度上半期に開始すべく、準備を進めております。当局と継続的に検討しております。上述の臨床試験と合わせて、厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業(第1次公募)」からの支援を得て、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の設備を活用して国産の新型コロナウイルスワクチンの早期供給開始に向けて生産体制整備を進めており、暦年2022年中の実用化を目指しています。
最新のmRNAワクチンDS-5670の開発状況について、詳細はコチラ
- ※1 2019-nCoVはSARS-CoV-2の暫定名称で同義語
- ※2 流行が世界各国へ拡大している新型コロナウイルス感染症に関して、政府全体の緊急的な取組みの一部として、AMEDが支援することを決定したワクチン開発課題の一つ
- ※3 医薬品有効成分の安定化ならびにデリバリーを効率化することで、従来のワクチン技術と比較して、より至適な免疫応答を誘導することを確認しています。
- ※4 企業においてすでに研究開発が進められているCOVID-19に対するワクチンの開発を重点的に支援し、実用化を目的とした事業
<新型コロナワクチン開発 関連情報>
厚生労働省 予防接種情報
厚生労働省 新型コロナワクチンについて
国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)トピックス COVID-19関連研究開発課題情報―ワクチン関連―
2. ドラッグリポジショニング
当社は、COVID-19治療薬探索のためのドラッグリポジションニングを実施中です。当社既存品を対象にCOVID-19治療への応用可能性を評価すると共に、当社の過去及び現在の研究開発プロジェクトの知見からヒントを見出し、COVID-19治療薬の標的分子や化合物の候補を選抜することにも焦点を当てた“広義のドラッグリポジショニング“をアカデミア等と連携して実施しております。
2. 医薬品・ワクチン等の製造と供給
2-1.新型コロナウイルスワクチンの製造と供給
当社は、アストラゼネカと締結した本ワクチンの製造委受託契約に基づき、当社子会社の第一三共バイオテックが原液供給を受け、「新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業」の設備を活用して、国内での製剤化(バイアル充填、包装等を含む)を行っております。
当社から出荷された本ワクチンの一部は、日本政府からCOVAX*等を通じて、東南アジアをはじめとした各国・地域に提供されております。
当社は、本ワクチンの製造受託を通じて、COVID-19の世界的流行の終息に向け、医療アクセスが不十分な地域を含め社会の安心・安全の回復に貢献しております。
* COVAXとは、Gaviワクチンアライアンス、CEPI(感染症流行対策イノベーション連合)及びWHOが主導する、ワクチンを共同で購入して途上国などに分配する国際的な仕組みのことです。
2. 既存医薬品・ワクチン等の継続供給
当社の既存医薬品・ワクチン等のグローバルでの供給について必要な対策を講じており、現状、供給に支障を来たすような事態は生じていませんが、引き続き状況変化を注視していきます。
3. 治験の実施
当社は、患者さんの安全を第一に考え、各国地域の薬事規制当局から発効される直近の通知や治験実施地域の状況を踏まえて、公衆衛生への負担軽減を考慮し、治験責任医師やCROと十分連携して、治験を実施しています。
地域の状況によって新規患者登録の一時中断を経験していますが、治験自体の中断はしておりません。一部の地域では一時中断後に新規患者登録が再開されています。
特に、投薬中の患者さんについては、安全確保を最優先し、継続投与ができるよう、治験責任医師をはじめとする様々な関係者と十分な連携を図っています。
4. 被災救済策
新型コロナウイルス感染症対策に対する世界的な支援が必要とされるとともに、今後、医療アクセスの整備が不十分な地域での急速な感染拡大が懸念される状況に鑑み、当社のグローバルな社会貢献の一環として、国連財団やスイス慈善基金会が世界保健機関(WHO)の新型コロナウイルス感染症パンデミックの予防や検出などの迅速対応を支援できるように運営する基金(新型コロナウイルス感染症連帯対応基金)に、公益財団法人日本国際交流センターを通じて100万米ドルを、更に新型コロナウイルス感染症から子どもたちを守り、母子保健サービスや栄養補助などの支援活動を継続して行なうための資金として活用していただくために、ユニセフが展開している「新型コロナウイルス緊急募金」に5,000万円を寄付しました。
また、日本国内においては、労働組合と共同でマッチングギフトを実施し、2021年3月までに7団体に対し、合計24,939,672円を寄付しました。
なお、その他グループ各社においても、各国・各地域のニーズに合わせ、寄付金を含む様々な支援を実施しております。
米国においては、米国研究製薬工業協会(PhRMA)を通じた支援としてHealthcare Ready、自然災害への対応やグローバルヘルスに対する支援を行っているNPOであるアメリケアズ、米国赤十字社その他の現地機関の新型コロナウイルス感染症パンデミックへの対応支援のために合計64万5千米ドルの寄付を行い、さらに2020年度後半に28万米ドルを様々な支援団体に追加で寄付を行いました。また、適切な医療資格を有する従業員に対し、患者のケアを担当する第一線の医療従事者の負担軽減に貢献するための、ボランティア活動を認めています。
欧州においては、多くの地域の医療機関や行政府、研究機関などに、必要とされるマスクや精製水などの物品寄付や金銭的寄付を行っています。
- ドイツにおいては、生産拠点のひとつであるミュンヘン近郊のパッフェンホーフェン市に、マスクの購入を目的として10万ユーロを寄付しました。また、難民支援や地域のフードバンクへの支援も実施しました。さらに、感染リスクを避けるための戸外活動支援の一助として、障がい者福祉施設に対し自転車やヘルメットの購入のための寄付を行っています。そして地元の警察の協力で購入した自転車を使って子どもたちが日常生活に有用なスキルである乗り方を学ぶトレーニングに活用されています。
- イタリアにおいては、医療機関に必要物資を提供するために4万ユーロを寄付しました。また、従業員による募金活動にマッチングギフトも実施しています。同時に、新型コロナウイルス感染症と心疾患に関連する論文などを医療関係者に提供するサイトや、高齢者のための啓発パンフレット発行とメンタルサポートを行う活動への支援を実施しております。
- スペインにおいては、約34万ユーロ相当の緊急的に必要な物資を医療機関に寄付しました。
- ベルギー、フランス、アイルランド、ポルトガル、トルコにおいても医療機関などに計7万ユーロを寄付しました。
- トルコでは" Covid-19対策を支援する”Silent Heroes" プロジェクトを実施しました。このプロジェクトでは医師、医療従事者、第一三共トルコの従業員および著名な歌手が協働し “Uzun İnce Yoldayım”(私は長く細い道を歩いています)という民謡を再解釈して、COVID-19と闘いながら命を失った医療従事者のこと決して忘れず、その闘いに対する意識を高めることを広く社会に啓発することに貢献しました。この取り組みは評価され、トルコ製薬業界が表彰する「社会的責任賞2020」に選ばれました。
中国においては、中国紅十字会を通じて100万元の寄付金の拠出、および現地グループ会社から主要医療機関への医薬品の提供を実施しております。韓国やタイにおいては、医療機関や共同募金へ約2万8千米ドル相当の寄付を実施しました。
いまだ感染拡大が続いているブラジルにおいても、COVID-19の影響で食糧不足に直面している家庭を支援するため、必要な食料をNGOを通じて家庭に届ける「CESTOU(セストゥ)」という活動を2020年9月に立ち上げました。この活動は、賛同する社員と会社のマッチングギフトの形式で、2020年12月までに合計1,380のフードバスケットを寄付し、2021年3月も活動を継続しています。
当社およびグループ会社における支援については、順次更新してまいります。
5. 感染拡大防止策の実施
当社では、CEOを本部長とする緊急対策本部を設置し、国内外の感染拡大状況、政府および専門家会議の見解を踏まえつつ、感染拡大防止策を講じております。日本国内での取り組みは以下のとおりです。
5-1. 国内グループ全従業員(派遣社員含む)を対象とした勤務体制
- 全社員を対象にテレワーク制度を拡大し、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置解除後は「Withコロナの勤務体制」とし、テレワークの回数上限を撤廃しました。
- COVID-19に関する状況の変化を十分注視し、医薬品の安定供給のために必要な在庫量の確保等に努めるとともに、業務上可能な社員は積極的に在宅勤務を実施しています。
- 公共交通機関を利用して出社する社員は、マスク着用と原則、時差出勤を実施し、職場や通勤時等における感染防止に努めています。
5-2. 出張、会議、研修、イベント等
- 国内出張については、不要不急のものは極力見合わせ、オンライン会議など の代替手段に変更しています。
- 会議、研修、イベント等については、対面と同等の効果・効率が期待できるものは原則オンラインで実施しています。対面での実施が必要・有効な場合は、3密対策を講じた上で、できる限り短時間で実施しています。
- 海外出張は原則として中止・延期、またはテレビ・電話会議等の代替手段に変更しています。
- 感染リスクが高まる「5つの場面」等の注意喚起を実施しています。
5-3. 医療機関等への訪問
- 医療関係者等への訪問は、先方の訪問ルール等の指示に従うこととし、訪問する場合は必ずマスクを着用しています。また、オンライン会議などの代替手段を積極的に活用しています。
5-4. 一般行動
- 社外の来客は、原則として中止・延期を要請、または電話等で対応しています。
- 事業場内での手洗い、手指消毒、マスク着用、咳エチケットを実施しています。
- 多くの人が集まるイベントや行事等への参加を極力避けています。
- 取引先との会食は、自治体の指示に従い、短時間とすることに留意の上、所属上長の判断で実施可否を判断しています。
- 接触確認アプリ(COCOA)の活用を推奨しています。
5-5. 事業場における対応
- 医薬品の継続供給を果たすため、工場に勤務の社員(全職種)を優先に、全工場、全研究所および東京・千葉・埼玉・神奈川の事業場に所属する社員を対象に、7月5日(月)よりワクチンの職域接種を開始し、実施申請した4,000名全員の接種を8月23日(月)に完了しました。
- 本社など一部施設では、食堂へのアクリル板設置や消毒用アルコールスプレー・フェイスマスクの配布などの措置を実施しています。
5-6. 体調不良時の対応
- 発熱等の風邪の症状が見られるときは、上長に報告の上、症状が改善するまで出社を控え、毎日、体温を測定して記録しています。
5-7. 感染者発生時対応
- 感染者は医師の就業許可があるまで就業を禁止しています。
- 濃厚接触により感染が疑われる場合は、感染者と最後に接触した日から14日間出社不可としています。
- 感染、または濃厚接触により感染が疑われる場合は会社への報告を義務付けています。
- 各事業場で発生時を想定した対応策を事前に定め、事務所の消毒など適切な二次感染予防策を実施しています。
5-8. 感染拡大防止を目的とした臨時休校への対応
- 小学生以下の子・特別支援学校に通学する子の臨時休校に伴い休務が必要な社員には特別休暇(有給)を付与しています。
6. 高齢者の方が健康に過ごすためのお役立ち情報の発信
[新型コロナウイルス感染症に関する、代表取締役社長 眞鍋淳のメッセージ]
このメッセージの英語版は、当社の英語サイト(https://www.daiichisankyo.com/)と共に、国連グローバル・コンパクト* が、国連と連携して開始した「#Uniting Business to Respond to COVID-19」キャンペーンの「CEOs Taking Action」サイトを通じて発信しています。
*国連グローバル・コンパクト:各企業・団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することによって、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組み