Backstory02 ADCで目指す、がん治療の未来(後編)

集合写真
執行役員、研究開発本部 研究統括部長 我妻利紀Toshinori Agatsuma
研究開発本部 研究統括部 研究イノベーション推進部長 阿部有生Yuki Abe
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競争よりコラボレーション、協業する文化

第一三共には、多くの研究者がいる。しかし、どんなに多くの研究者がいても、最終的に一つの医薬品を生み出すためには、それぞれの能力を存分に発揮できる環境が必要だ。とくに、ADC技術の開発には、様々な専門知識が必要であった。
「ADC技術の開発には、抗体と抗がん剤、それをつなげるリンカーなど、複数の技術のコラボレーションが必要でした。専門性の異なる人たちが同じゴールに向かっていくという意味で、技術のすり合わせを得意とする日本の熟練工のような仕事の進め方が上手くマッチしました」(我妻さん)

新しい医薬品で患者さんの役に立つという1つのゴールに向かって、さまざまな専門分野の研究者が知恵を出し合い、議論を重ねながら、すり合わせをする土壌が、社内にできていた。

「5年10年かかるのが当たり前の創薬の仕事では、競争的になって焦れば焦るほど新しいものが出てこないケースが多くあります。研究員の経験値や気づきを大切にして、ボトムアップとチームワークで、結果を導いたということだと思います」と阿部さんは振り返る。
「抗体、化合物、リンカー、すべてを最適化する。組み合わせたあとで、本当にきちんと効果が発揮できるかのすり合わせが必要です。それぞれ最高の部品を組み合わせれば乗り心地の良い車ができるわけではないのと同じで、チューニングが必要なのです」(我妻さん)

阿部 有生
社屋

フラットな組織で、研究に専念できる環境を

世界中の研究者たちが、画期的な新薬の開発にむけ日夜努力している。そんな中で、世界に先駆けて新薬を創出するためには、スピードが勝負になる。

「日々の細かい判断まで上層部に話を通していたのでは、時間のロスになります。現場に任せ、現場で判断できる環境が大事です。特に最先端の研究においては、専門性がなければ最適な判断はできません。専門性がどんどん新しくなっていき、それをアップデートしているのが研究の現場です。組織の上下関係を気にしていては、スピードがあがりません」

大きな方針や判断はしっかりと組織で行う一方、会議を減らして効率化を進め、研究者が研究に専念できる環境を作り、細かい指示は出さず、大部分を現場に任せる。
「個々の担当や業務範囲などを細かく指示して仕事を進めようとすると、その範疇を超えるものは出てきません。それぞれが自立して考え、自主的に行動する。メインストリームではないところから、新しい発見が生まれるものです」

「1日も早く新しい薬を」と待ちわびる人は世界中にたくさんいる。そんな人たちに、より良い薬をいち早く届けようと邁進する研究者たちが、ここにいる。人々に希望を与える薬の開発を目指し、彼らは今日も研究に取り組んでいる。

※所属等は掲載当時の情報

阿部 有生

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