第一三共グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への損失を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しています。

リスクマネジメント

リスクマネジメントの推進体制

リスクマネジメントの推進にあたっては、ヘッド オブ グローバル コンプライアンス・リスクマネジメントがリスクマネジメント推進責任者として当社グループ全体のリスクマネジメントを統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制の運営を行っています。各部門においては部門の責任者が組織の目的・目標の達成に向け、個別リスクにかかわる分析・評価、年次対応計画の策定・遂行、組織内でのリスクマネジメントにかかわる情報提供・教育・啓発など自律的にリスクマネジメントを推進しています。なおリスクに関する経営会議の広範な意思決定を補完するため、当社グループのリスクについて集中的な議論を行なう会議体として「リスクマネジメントコミッティ」を2025年度より設立いたします。

重大リスクの年次マネジメントサイクル

影響度と発生可能性の評価に基づき、企業経営に重大な影響が想定されるリスクについては、経営会議および取締役会において特定し(下図、当社グループにおけるリスクレベル分類の概念図参照)、リスクごとに任命された担当責任者が中心となってリスク対応策を立案し(Plan)、関係組織と連携の上、リスク対応策を推進・実行しています(Do)。リスク対応策の進捗状況については、年2回モニタリングを実施しています(Check)。また、必要に応じて、リスク対応策の是正・改善を行います(Action)。重大リスク顕在化の予兆が確認された場合は、速やかにCEOおよびリスクマネジメント推進責任者に情報が集約され、適切な対応を図る体制としています。
また、当社グループでは、リスクマネジメントの一環として、災害発生に備えた事前および発生時の対応を示す事業継続計画(BCP)やクライシスマネジメントについて定めています。

Business Continuity Plan の略

クライシスマネジメント

第一三共グループは、企業活動に潜在するリスクのうち、顕在化し緊急な対応が必要な事象、発生可能性が極めて高くなった事象を総称して「クライシス」と定義しており、その発生による損失最小化を図ることを目的に、クライシスマネジメントに関わる基本的事項を定めたグローバルクライシスマネジメントポリシーを策定しています。

基本方針として、「クライシス発生時は、『第一三共グループの社員および関係者の生命や地域社会の安全を確保する』『生命関連企業の一員としての責任を全うする』ことを基本に、迅速かつ確実にクライシスマネジメントを展開し、人・社会・企業の損失を最小限に止め、事業の継続や早期復旧を図るべく努力する。」ことを定めています。 各地域・機能およびグループ会社において自律的にクライシスマネジメントを推進するとともに、クライシスの種類(災害・事故、事件<テロを含む>・不祥事・法令違反、情報管理に関する問題、製品に関する問題)やクライシスの影響度合いに応じて、グローバルに機動的な対応を可能とする体制を構築しています。

報告基準や報告ルートを明確に、クライシスマネジメント責任者(CEOまたはCEOが指名した者) 、クライシス初期対応責任者(ヘッド オブ グローバル リスクマネジメント)を設置し、グローバルに影響が大きく、全社対応の必要性があるクライシスについては、リスクマネジメント推進責任者(ヘッド オブ グローバル コンプライアンス&リスク)とも当該情報を共有し、迅速かつ的確な初期対応により、事態の拡大防止と早期収束に努めます。

また、クライシス収束後は、事後分析により、再発の防止や対応の改善を図ります。

クライシス発生時の初期対応

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事業継続計画(BCP)

当社グループの事業継続計画(BCP)は、事業継続へ影響を及ぼす様々な脅威に対処するべくオールハザード型BCPとして整備し、有事においても社会からの要請に応えるべく医薬品等の安定供給および品質確保を可能とする体制、および、研究開発の継続性を確保できる体制を構築しています。また、クライシスの多様化とビジネスのグローバル化に対応するために、訓練を実施し、優先的な供給製品を定期的に見直すなどの活動を行っています。

第一三共新型インフルエンザ対策行動計画

当社は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」における指定公共機関に指定されています。

特措法における業務計画については、「第一三共新型インフルエンザ等対策行動計画」として策定しております。

新型インフルエンザ等が大流行した際、関係機関と連携・協力し対策を実行することにより、抗インフルエンザウイルス薬をはじめ医薬品の供給継続に努め、企業の社会的責任を果たしてまいります。

指定公共機関(法第2条第6号)
独立行政法人等の公共的機関及び医療、医薬品又は医療機器の製造又は販売、電気等の供給、輸送その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの。

主なリスクとその対応状況

以下は、当社グループのリスクマネジメントにおいて重大なリスク、ユニット・部所レベルの管理リスクの中から抽出した「主なリスク」です。抽出にあたっては、投資判断への影響の有無等を考慮しています。

 

領域 重大リスク リスクの概要 リスクへの対応状況
研究開発· 他社との アライアンス  〇 新薬候補品、特にアストラゼネカ社と提携したトラスツズマブ デルクス テカン(T-DXd/DS-8201:抗HER2 ADC、製品名:エンハーツ®)および ダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062:抗TROP2 ADC)、 また、米国メルク社と提携したパトリツマブ デルクステカン(HER3- DXd/U3-1402)、イフィナタマブ デルクステカン(I-DXd/DS-7300) およびDS-6000(R-DXd)に関する研究開発の中止、承認審査基準 の変更等による承認取得不可、研究開発に係る提携に関する契約 条件変更・終了等の可能性
  • アストラゼネカ社および米国メルク社と各種の共同委員会を設置し、 ビジョンと戦略の策定や進捗管理等を実施
  • 各国の薬事規制当局との継続的なコミュニケーションを通じた 薬事リスクの管理・低減
医薬品の 品質問題や 副作用 医薬品の品質問題や予期せぬ副作用発現による 製品回収や発売中止、健康被害に関する賠償責任等に係る 多額の費用の発生の可能性
  • GMPおよびGDPに適合する管理体制の強化による 一貫した品質保証を実施
  • グループ各社の事業所およびビジネスパートナ―に対する 定期的な監査を実施
  • 国内外の安全管理情報(副作用情報等)の客観的な 評価・検討・分析の実施と医療現場への適確な情報提供
  • 全社員を対象とした安全管理情報についての研修実施(毎年)
海外における 事業展開 海外事業における、当該地域の政治不安、経済情勢の悪化、 法規制等への抵触、労使関係等の悪化の可能性
  • 海外子会社のリスク管理担当者を任命、定期的な情報収集・交換を実施
  • 問題発生時には、当該担当者をハブとする現地子会社との連携により、 迅速に課題解決
製造·仕入れ 当社施設の損壊、社会インフラの障害、技術的な理由等による 製造活動や仕入れの遅延・停止等による悪影響の可能性
  • 有事の際の速やかな業務復旧、ならびに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制の整備
  • 優先供給品目に関わる業務・組織体制の見直し等、継続的なBCPの改善
  • 優先供給品目の定期的な見直し
  • 生産・物流拠点の分散、自家発電装置の設置
  • 主要システムの二重化等、IT基盤の強化
環境·安全 当社社内外の人への化学物質の暴露、土壌汚染、大気汚染等による 環境への悪影響や気候変動に伴う気象災害や温暖化等による医薬 品のサプライチェーン寸断、製造コスト上昇等が医薬品の安定供給 に悪影響を及ぼす可能性
  • 規制当局の基準以上の厳格な自主管理基準値の設定と 継続的なモニタリング
  • TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)に沿った情報開示
知的財産権 事業活動が他者の特許権その他の知的財産権に抵触するとして第 三者から指摘を受けた場合の事業の断念や係争と、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する場合の当社からの訴訟提起の可能性
  • 知的財産の創造と保護による価値の最大化とリスクの最小化
  • 知的財産係争が発生した場合、社内外の関係者と協力し、 事業への影響を最小限にとどめるための体制の整備
訴訟 医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引に 関する問題等に関する訴訟の可能性
  • 法令、契約、紛争防止・解決等の観点によるリーガルリスク最小化と ビジネス機会最大化
法規制、医療費 抑制策等の 行政動向 薬価基準の改定、医療制度、健康保険に関する行政施策による 事業への悪影響の可能性 
  • 薬価制度改革や流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・ 割戻改定の実施
  • 適切な販売条件の設定・実施 • 各国における医薬品価格政策のモニタリング
法令違反  〇 役員および社員の個人的な不正行為等を含めた 重大な法令違反の可能性
  • 不適切な活動を早期に発見するための事業活動のモニタリングの実施
  • 法規制の遵守・徹底と教育・啓発等による発生防止策の実施
  • コンプライアンス違反の未然防止策制定、 違反があった場合の厳正な対応
金融市況 および為替変動 株式市況の低迷や金利動向、為替相場の変動による 不利な影響の可能性
  • 政策保有株の削減
  • 年金基金資産配分の期中見直し
  • 為替ヘッジ取引
ITセキュリティおよび情報管理 ネットワークウイルス感染、サイバー攻撃等による システムの休止や個人情報を含む機密情報の漏洩の可能性
  •   CDXOを統括責任者として、情報管理・セキュリティに関する 対策の推進やポリシー・ルールの整備
  • 情報管理に関する社員研修の実施
  • 防御機能、侵害の検知機能と対処機能等のセキュリティシステムの整備
  • 情報セキュリティ基盤強化・運用改善
  • 個人情報管理状況の定期的なモニタリング
人材 採用市場の競争激化等により、高い業務遂行能力や各職務に 必要な高度な専門性を持った人材を十分に確保できない可能性
  • 計画的な採用活動の強化、多様なアプローチによる人材の育成・確保
  • グローバル共通の人事制度および人事情報システムの構築・導入
  • One DS Cultureの醸成とインクルージョン&ダイバーシティ(I&D)の推進、 グローバル共通のエンゲージメントサーベイによる分析・改善

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