当社のグローバル化の推進や創薬をパワーアップしていくには、DXは不可欠で、
強力に推進されていると感じており、
しっかりサポートしていきたい。
社外取締役(独立役員)
野原 佐和子
取締役会の機能発揮・コーポレートガバナンスの向上に向けて、
ご自身の経験・知見をどのように活かしてこられましたでしょうか。
野原
新薬の開発をコアとする当社のイノベーティブな経営戦略や挑戦し続ける姿勢を応援していきたいと強く感じており、R&D戦略やデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略、グローバル化、また企業ブランディング等について発言してきました。上場企業8社の社外取締役を務めてきた経験を活かし、年々変化するコーポレートガバナンスを取り巻く環境、インクルージョン&ダイバーシティ、ESG経営等の重要性を考えながら、周辺環境の変化を踏まえて発言することが、取締役会の機能発揮・コーポレートガバナンスの向上につながっていると考えています。
小松
第一三共グループの企業理念に掲げられている「多様な医療ニーズに応える」ためには、求められている医薬品を創るだけではなく、創り出した医薬品をいかに提供するか、患者さんや市民の方々が必要な情報にアクセスできるようにどうサポートするか、という視点が重要です。この点について、自身の専門性や研究領域を活かし、医学と公衆衛生の視点で議論をするように努めてきました。
今年の7月より新しく取締役になられた西井取締役に抱負をお伺いいたします。
西井
第一三共という、世界で成長している製薬企業の社外取締役に就任したことに、緊張感と大きな責任を感じています。食品・アミノ酸素材メーカーでの会社経営者としての経験を活かし、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化、ESG経営の推進、企業ブランド価値の向上、グローバル化といった観点から、取締役会の実効性向上に貢献できるのではないかと思っております。
当社グループの持続的成長への課題についてどのようにお考えでしょうか。
釡
エンハーツ®の急速な拡大により、世界中にマーケットが広がり収益の規模を急拡大している中、グローバル化を一層推進する必要があります。特に、2023年度より開始したコーポレートの機能のグローバル化やCxO体制について、進捗や課題をしっかりモニタリングしていく必要があると考えています。
社外取締役としては、「第一三共のグローバル化とは何か」という点において、社内の取締役の方と比べて比較的まだ認識の度合いが少ないと感じております。当社が目指している「グローバルヘルスケアカンパニー」はどういう姿なのか、グローバル化の運営・執行状況について執行側から深く話を聞き、議論を進めたく、議長としてそういった運営を心がけたいと考えています。
小松
第一三共のコア・バリューには、「社会や人々の生活に大きな変化を与える新しい仕組みや発明などを創造すること」が掲げられています。今日、本来提供できるはずの医療と現実の医療との間のギャップが指摘されていますが、その背景には、患者さんも医療関係者も最善の知識を十分に活用できていないことがあります。そのギャップを埋め、社会や人々の生活に大きな変化を与えるという意味で、Healthcare as a Service (HaaS)は大きな役割を果たせるのではないかと感じています。
HaaSの構築は、第一三共単独ではできませんが、その仕組みの一例を提案し、関係者と協働し実装することで、この領域のパイオニアになれるのではないかと考えています。グローバルでは、私たちが想像する以上に急速にDXが進んでいます。その動きに遅れず、日本の中で先進的な役割を果たしていくことが重要であると考えます。
野原
2025 DXビジョンでは、「データとデジタル技術を駆使したグローバルファーマイノベーターの実現」を掲げ、グローバルなコミュニケーション基盤や基幹業務システムの構築、人事プログラムのための基盤構築・整備等に取り組んでいます。当社のグローバル化の推進、そして創薬をパワーアップしていくには、DXは不可欠で、強力に推進されていると感じていますので、それをしっかりサポートしていきたいと思っています。
2030年に向けては、一人ひとりに寄り添ったシームレスなHaaSの実現に向け、トータルケアエコシステムと、その中核となるデータ基盤の構築が既に始まっています※。さまざまな主体と協業しながら健康や医療に役立つ多様なサービスやソリューションを作っていくことになりますが、そのためのスキルや人材への投資をしっかり行いながら、優れたアイデアを持つスタートアップ企業やベンチャー企業との連携等により、飛躍的な取り組みが推進されることも期待しています。
西井
地政学リスクやサプライチェーン管理という観点から、現在の第一三共において、主な知的財産が東京の研究所から生まれている点は非常に重要であると捉えています。一方で、本社、特にコーポレート部門をグローバル化して行く為には、多様な経験や考え方を持つ人材の交流が必要になります。海外の方が、日本の第一三共の本社や研究所で働きたいという状況を作ることも重要であり、第一三共の目指すべきグローバル化の推進につながると考えています。
ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化、ESGの推進、企業ブランド価値の向上、
グローバル化といった観点から、
取締役会の実効性向上に貢献していきたい
社外取締役(独立役員)
西井 孝明
指名委員会と報酬委員会について、昨年度の取り組みや、今後の課題についてお聞かせください。
野原
昨年度は合計で11回、報酬委員会を開催し、2021年度に新たに導入された役員報酬制度の運用状況等をモニタリングし、議論を行いました。また、報酬委員会と指名委員会の合同の会議にて、眞鍋CEOから1年間の目標、中間期及び最終的な業績評価を報告いただき、それを受けてCEOの業績を評価しました。
今年度からは、特にグローバル人事制度がグループ全体で整備されていくため、その状況を踏まえ、グローバル人事制度とシナジーを持てるような役員報酬制度の構築に向けて、必要に応じて期の途中でも改定すべき点があるかという目線も持ちつつ、2026年度に向けてどのような役員報酬とすべきかを議論して行く予定です。
釡
指名委員会も同様に11回開催し、会長CEO、社長COOの選定、CEO/COO体制の構築、社長CEO後継者計画、取締役候補者、監査役候補者、CxO体制等のさまざまな議題について議論を行いました。
また、複数年に亘って社長後継者計画について議論を重ねた結果、当社グループの中長期的な成長をリードするにふさわしい人材として奥澤さんを社長COO候補者として取締役会に答申しました。
加えて、取締役会の監督機能のさらなる強化を目的として、最適な取締役会構成はどうあるべきかについても議論を重ねてきました。当社の戦略の方向性と求められるスキル等を勘案し、西井さんを新任社外取締役候補者として取締役会に答申しました。今後も、取締役の構成や、事業戦略に紐づいたスキルを有する候補者の選定について議論を続けていく必要があると認識をしています。
奥澤社長COOへの期待についてお聞かせいただけますでしょうか。
釡
社長COOの選任に関してはさまざまな議論がありましたが、これまでの経験、実績、決断力、使命感、また、社員から信頼される人物であるということで経営執行を任せるに相応しい人物だと判断しました。社内外ステークホルダーと積極的に対話を行いながら、第5期中計の確実な達成、2030年ビジョンの実現に向け役割を発揮されることを期待しています。
野原
社長COO選任の際、候補者の中で奥澤さんは、周囲の人たちから支持され信頼が厚いという評価だったことが印象に残っています。国内外各地にさまざまなグループ会社が展開される中で、皆から慕われる人がトップに立つことは、リーダーシップを取っていく上で重要なことだと感じました。 世界における注目度が高まり、プレッシャーも大きいと思いますが、目標達成に向け、グループ全体で力合わせて頑張っていただきたいと思います。
小松
今、当社がグローバルヘルスケアカンパニーに急速に変わっていく中で、長期的な視野を持ちつつも、想定外に対する適時の対応と、現実的な事業推進の両方が求められます。奥澤社長COOは、この両方の視点と能力を持っている点を評価しています。世界的な事業展開を行うと、先例のない多くの問題にも遭遇するでしょう。奥澤社長COOはこれまでも海外でさまざまな難題に取り組んで解決してきたという経験がありますので、トップリーダーとして力を発揮されるのではと感じています。
西井
奥澤社長COOの2023年度の目標に、グローバル化を推進するという観点で、グローバル人事プログラムの検討、コア人材の獲得・育成、人材交流といった項目が掲げられています。今後、指名委員会委員長として、しっかりとサポートして行きたいと思います。
患者個人、組織レベル、地域レベル、
そして社会全体の枠組みからとらえ、
社外取締役としての役割を果たしていきたい
社外取締役(独立役員)
小松 康宏
本日の座談会の内容を踏まえ、第一三共の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に向けた、ご自身のコミットメントについてお聞かせください。
野原
当社は今、がん領域での事業拡大やグローバル化の進展という大変重要な時期にあり、取締役会で入念に議論すべき議題が多岐に亘ります。社外取締役の一人として、できるだけ長期的視点に立って、全体を俯瞰した発言ができるよう、社外の目線でさまざまな方向にアンテナを張って取り組んでいきたいと思っています。
小松
経営方針の決定がパーパスやコア・バリューに沿っているかどうかを、社外の視点、特に公衆衛生学的な視点をもって監督してまいります。当社の事業がどのような価値を創造するかを、患者個人、組織レベル、地域レベル、そして社会全体の枠組みからとらえ、社外取締役としての役割を果たしていきたいと思っています。
西井
パーパスを核とした社員の強いエンゲージメントが、患者さんやそのご家族の生活をより良いものにするという“価値”を生み出し、パートナーとの価値共創によりその価値をグローバルに展開していく。結果として、株主や投資家からの期待が上がり、時価総額に反映され、それがまた社員へのインセンティブにつながっていく。こういったポジティブな価値創造プロセスを回し続けるということ自体に企業の価値があると考えます。
製薬ビジネスは非常に厳しいレギュレーションの中で行うビジネスです。必要に応じてネガティブなシナリオも開示する等しながら、ステークホルダーとの共創を通じ、中長期的に価値創造プロセスを回していく構造が作れるよう、監督としての役割を果たしていきたいと考えます。
最後に、本日の議論を振り返り、取締役会議長としてメッセージをいただければと思います。
釡
社外取締役は守りのガバナンスに傾きがちな面もありますが、執行側を後押しする攻めのガバナンスにもしっかり重きを置いて、攻めと守りのバランスをうまくとっていくのが重要と考えています。
議長としては、改めて、当社の持続的成長と中長期的な企業価値向上を果たすために、長期的な視点に立った質の高い議論ができるように進めていきたいと思っています。第一三共が提供する価値を、社会的価値、環境価値と財務的価値を合わせたものだとして捉え、患者さん・医療関係者を含むステークホルダー全ての方々にとっての企業価値という視点を忘れずにしっかりと推進していきたいと考えております。